何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
<< December 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
見る阿呆2015(3)
 ■8月13日・徳島市
この日は朝から晩まで、まさしく阿波踊り三昧だった。その前にまずは腹ごしらえ。昨日も行った「セルフうどん やま」で、朝うどんをいただく。朝からうどん。しかも肉うどんで、さらに揚げ卵つき。朝からどんだけ食べるねん。
DSC_0062.jpg

うどんを食べながら「阿波踊り見物ガイド」を読む。阿波踊りは夜しか楽しめないと思っていたけど、日中も色々なイベントをしているらしい。まずは朝11時から、「阿波おどり会館 特別公演」を見ることにした。この日は無双連が出演するらしい。昨夜、南内町演舞場でも独特のキレのある踊りを披露していた連だ。
阿波おどり会館に着いたのが10時前。11時公演のチケットは売り切れてるかもと思ってたけど、普通に買えた。
DSC_0063.jpg
特別公演が行われるホールはこじんまりした小ホールで、開演前には満員になった。公演では、踊りはもちろん、司会も無双連の人がつとめて、それがサマになってたのは驚き。どんだけ多才なんだ。それだけ、有名連は阿波踊り期間中だけでなく、色んな時期に色んな場所で公演していて、慣れているということだろう。
DSC_0078.jpg
昨夜見た時も感じたが、無双連の踊りは独特だ。男踊りは赤いうちわを鮮やかにひるがえし、他では見られない直線的な手さばきで力強く踊る。女踊りはつま先を立てないベタ足で、「これが昔の踊り方。これを守っているのは無双連だけ」と司会者は言っていた。
二晩続けて無双連の踊りを見て感じたが、私は男踊りはこの連が一番好きかも。独特の直線的な手さばきが小気味良い。

DSC_0077.jpg
阿波おどり会館という場所柄か、お客の大半が県外からの観光客(実際に司会者が挙手させて集計を取った)。途中でお客も舞台に呼ばれて、連と一緒に踊る演出もあり、優秀者は舞台上で表彰された。(全てのお客が強制的に踊らされるわけではない。希望者のみ)

DSC_0079.jpg
公演後は、無双連の人と一緒に記念撮影も撮れる。※写真の女性は私に非ず

阿波おどり会館を出た後は、昼ご飯を食べて、13時からの「選抜阿波おどり大会」に備える予定だった。だが朝に肉うどんを食べたのであまりお腹が空いていないし、また道中にあまりそそられる飲食店がない。そこで一昨日も行った駅横のチュロスカフェに再び行く。というのも一昨日、夜からの阿波踊り見物時に食べようとチュロスを買ったものの、夜、食べる頃にはすっかり固くなっててあまりおいしくなかった。そこでリベンジすることにしたのだ。
DSC_0080.jpg
生チョコチュロサンデーをイートインで食べる。揚げ物はやっぱり揚げたてがおいしい、という当たり前のことを再認識。冷たいソフトクリームとの相性も抜群。

チュチュチュロスカフェ
http://chuchuchurros.com/

DSC_0082.jpg
腹ごしらえもすませて、「選抜阿波おどり大会」が行われるあわぎんホールへ。まだ開場前なので会館裏の橋で涼んでいたら、この日のトリをつとめる阿呆連の人たちが裏口から入場していった。小さい男の子が「阿呆連や!」とキラキラした目で言う。破れ番傘の衣装を見ただけで阿呆連と分かるとは、徳島での阿呆連の人気のほどがうかがえる。

この「選抜阿波おどり大会」は、午前中に見た「阿波おどり会館 特別公演」とは対照的に、徳島県人のお客が多いように感じた。踊りを観覧中に聞こえてくる会話が、「踊りを見慣れてる」という感じで。
DSC_0086.jpg
「選抜阿波おどり大会」というだけあって、徳島市の連だけでなく、他の市からも参加していた。この金長連は小松島市から参加。情緒あふれる踊りが印象的だった。

DSC_0091.jpg
沿道で見るのと、このようにホールで見るのとは阿波踊りの印象がまるで変わる。照明も凝っていて、この舞台では踊り子の衣装の色に合わせた照明になっている。

DSC_0095.jpg
トリを飾った阿呆連。「阿波の阿の字は阿呆の阿」というノボリにも自信がみなぎっている。「こんな演出もあるのか」という斬新な仕掛けがいっぱいで、人気ナンバーワンの連ということを実感。だが他の連もみな素晴らしく、阿呆連のレベルが飛び抜けて高い、という感じは特にしなかった。

公演を見終わったら小腹が空いていた。今度はちゃんと食事を取ろうと、行列ができていた三八製麺所で徳島ラーメンを食べる。店の横の壁には「連員募集」の貼り紙が。こういう貼り紙は徳島市内でよく目にするが、練習は週に何日、何時間くらいなのかとか、待遇面は一切書かれていない。仕事じゃないから給料とかはないんだろうけれど。
DSC_0096.jpg

ラーメンを食べ終わったのが15時。そろそろ、無料演舞場の席に座って場所とりすべきか。そう思って、昨日も通った両国本町演舞場に向かう。ちょうど本部席の向い側の最上段席が空いていたので、らっきーと思いそこに座る。ローソンの向かいでもあるので、ローソンのwifiにつなげられるのも好都合だった。
DSC_0098.jpg
しかしまだ15時すぎ。暑い。この状態で18時の阿波踊り開演まで待つんか〜と思っていたら、やがて雨が降り出した。傘を用意してなかった人には悪いけど、この雨でだいぶ暑さがやわらいで助かった。
雨はどんどん激しくなり、このままだと祭り中止では……と危惧していたら、開演直前にピタリと雨がやんだ。(途中でまた降り出したけど)

DSC_0123.jpg
さゝ連の踊り子さん。桟敷席のすぐ前まで来て踊ってくれて、盛んにカメラのフラッシュを浴びていた。

DSC_0127.jpg
有名連のサポートを受けながら、にわか連の人たちも踊りながら行進。

DSC_0131.jpg
昨日も書いたが、見るたびに腰をいわしそうな踊り方だと思う葉月連の黒ハッピ。

DSC_0134.jpg
どの連にもたいてい一人は、実に味のある踊りを披露するおじさんがいる。動きにスピードはないんだけど、とぼけたような愛嬌あふれる表情込みで魅せてくれる。

DSC_0150.jpg
若さあふれるハツラツとした踊りを披露した四国大学連。青春映画のワンシーンのよう。

DSC_0165.jpg
有名連じゃない連、たとえば企業連とかにはあんまり踊りは期待しないもんだけど、たまに予想を裏切る踊りを魅せてくれる企業連も。純粋に祭りを楽しんでいる雰囲気がいい。

DSC_0183.jpg
本家大名連。右手前、一人だけ鉢巻きをしてないお兄さんはこの連の名物男らしく、昨日見た時も、そして今日もバチをくるくる回すパフォーマンスで観客を湧かせていた。

DSC_0189.jpg
心酔連。客席に向かって太鼓を叩いてくれるのは実は珍しいかも。

DSC_0192.jpg
私がこの日、もっとも見事だと思ったのは阿波扇。扇をくるくるひるがえしながら、一糸乱れぬパフォーマンスで行進してくるサマは華やかでダイナミック。手前の女性は、今年の阿波踊りのポスターに登場してる人かも?似てる。

DSC_0196.jpg
阿波扇の女踊り。この他にも男踊り、ちびっ子踊りもあって見応え抜群。

阿波扇を見たらもう充分満足したわたし。時間も22時前だしそろそろ帰ろうかなと落ち着かなくなる。今夜は高松に移動してそこのホテルに泊まる予定で、高松行きの電車の最終が22時41分。だから22時20分くらいまではこのまま踊りが見れるのだが、もう充分阿波踊りは堪能したし帰ろうかなあと迷いつつ席に座っていたら、最後に思いがけないサプライズがあった。一昨日、鳴門市で見たうずしお連が踊りこんできたのだ。
DSC_0203.jpg
鳴門市からの参加ということで、いわば「鳴門代表」。今回も次々と構成を変えてうずしおを表現する、統制のとれた踊りを披露。太鼓も迫力抜群で前の席の女性が「すごい」と嘆息していた。

思いがけずまたうずしお連の踊りが見れたことで、今度こそ満足した私は席を立った。鳴門市、徳島市と三日間に渡った阿波踊り見物はこれでおしまい。無料演舞場、有料演舞場、小ホール公演、大ホール公演と、色んなシーンの阿波踊りを見物した三日間。意外だったのは、阿波踊りといえばすぐ浮かぶあの「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」がほとんど聞けなかったことだ。このフレーズを歌っていたのは企業連、それも1、2連だけ。有名連は全く歌わず、かわりに「一かけ二かけ三かけて」から始まるフレーズをよく歌っていた。

徳島市だけでなく、先に鳴門市の阿波踊りが見れたこともよかった。徳島市の阿波踊りの規模の大きさがよく分かったし、また徳島県内の他の市でも、徳島市ほど規模は大きくなくても、それぞれに阿波踊りを楽しんでいることが分かったから。

高松に向かう電車の中、電車の走行音が、鳴りもの隊のお囃子に聞こえて仕方がなかった。
web拍手 by FC2
見る阿呆2015(2)
11日の観覧紀ではなんだか冷静に「阿波踊り初見物」の感想をつづっているが、あれは一晩たった後に書いたからであって、実は初めて阿波踊りを見た瞬間、私は感動の涙を流していた。私はけっこう感激屋で、スポーツの試合などでもすぐ泣く。阿波踊りを見て泣いたのは、この一年間のたくさんの人の思いと努力が、このわずかな時間に凝縮されてるんだなあと思うと、こみあげてくるものがあったからだ。

■8月12日・徳島市
阿波踊り期間中は、徳島市内のホテルは予約がとりづらいだろうなあということは、想像はしていた。だがいざホテルを探してみて、私は阿波踊りをなめていたことを痛感した。8月12日に泊まれるホテルが、本当に一件もない。今、これを書いているのは8月13日の朝、阿波踊り会館の二階ロビーで阿波踊り公演が始まるのを待っている間だが、私の隣に座っている家族が「昨夜は泊まるところがなかったので車の中で寝た」とか話しているし。車はある意味「走る個室」なんで寝るのはまだなんとかなっても、この夏の暑い時期にシャワーを浴びれないのは辛いだろう。
私も旅行前にホテルが見つからなかったときは「最悪ネカフェで泊まろう」と思ったが、そのネカフェも徳島にはあんまりなくて、阿波踊り期間中はすぐ満員になるのだとか。本当にハンパない。

結局、近隣の駅まで範囲を広げた結果、徳島駅から電車で約45分離れた鴨島駅近くの旅館を押さえることができた。そう、ホテルではなくて旅館。トイレとお風呂は共同で、もちろんwifiも通っていない。
だがどうせ寝るだけだから、別にいい。それより駅の目の前の立地というのがありがたい。阿波踊り観覧後、宿に帰るのはどうしても深夜になるから、駅から近ければ近いほどいい。
IMG_1199.jpg
鴨島駅

DSC_0001.JPG
鴨島駅のホームに貼られていた祭りのポスター。左がさぬき高松まつり。右が徳島市阿波おどりで、写っている女性は「阿波扇」の踊子だそう。
こう言ってはなんだが、やはり徳島市の阿波踊りは全国区で、高松まつりは地元民向けという感じが、ポスターが二枚並ぶとよく分かる。高松まつりは徳島のように、全国から観光客を誘致しようという気があまりなさそう。
私はこの後、8月14日に高松市に移動し、全国一長いといわれるアーケード商店街を散策した。あいにくその日の16時に大阪に帰ったので、その夜行われる高松まつりは見れなかったが、商店街で総おどりが行われるらしく、その準備が進んでいた。

DSC_0002.jpg
昼食は徳島駅前の「セルフうどん やま」で。人気店らしく、14時を過ぎていたのに店内はほぼ満席。
この後、高松で食べた「さか枝」のさぬきうどんがおいしすぎてこの「やま」のさぬきうどんの印象が薄らいでしまったが、やはり四国、レベルは高い。翌朝も、私はこの店で「朝うどん」を食べた。駅前という便利さもあり、次に徳島に行ったらまたぜひ利用したい。

セルフうどん やま
http://grand-p.co.jp/yama/

この日は20時半から、南内町演舞場で踊りを観覧する予定。すでにチケットも買ってある。それまでの時間、街中をぶらぶら散策した。
DSC_0007.jpg
南内町演舞場の前を通りかかると、「映画・眉山ロケ地」という弾幕が誇らしげにかかげられていた。

DSC_0008.jpg
南内町演舞場の目の前、両国橋には阿波踊りの銅像が。

DSC_0005.jpg
両国通りには無料演舞場が設けられている。踊りが始まるのは18時だが、15時のこの時間から、すでに席に座って待っている人がいた。無料なので、席は早いもの勝ちなのだ。だが座って待っている人は少数派で、座る代わりに、座席に紙などをテープで貼って場所取りしている人が多かった。

DSC_0006.jpg
この両国演舞場はもっとも距離が長く、「踊子泣かせ」らしい。そのことをもじった、両国通りの飲食店の立て看板。

DSC_0004.jpg
徳島が「アニメの町」として町おこししていることは前に書いたが、市内の地鶏料理店の店頭に貼られたポスターもアニメ絵。

この日も猛暑日で、散策していると暑さでちょっとばててきた。そこで去年も行った「阿波おどり会館」に涼みに行く。あそこは土産物スペースが広く、見ていて飽きない。

当たり前だが、去年9月に来た時とは比べ物にならないくらい観光客でにぎわっていた。阿波踊りに関するみやげも豊富に揃うが、驚いたのは、有名33連、それぞれのグッズがあること。どうやら徳島では、有名連はタレント並みの人気と知名度があるらしい。
DSC_0010.jpg
中でも、圧倒的に人気があるのが阿呆連。私が見つけた33連グッズは2種類だが、どちらも阿呆連グッズが売り切れていた。
DSC_0012.jpg
涼みがてらお土産スペースをうろうろしていると、やがて外から太鼓の音が聞こえてきた。つられるようにして会館を出ると、すぐ隣の眉山天神社の階段下で、連の人たちが練習をしていた。
時計を見ると17時過ぎ、いよいよ阿波踊りの初日が開幕するという雰囲気が高まってきた。

夕方になって少しは涼しくなってきたので、そのまま眉山天神社の階段を登る。この神社は、中の施設が連の「楽屋」に割り当てられているらしく、いくつかの連が荷物を運んだり、振り付けの練習をしたりしていた。
DSC_0017.jpg
体操ポーズのお地蔵さん。その向こうでは連が踊りの練習中。リーダーが「しんどいけど、基本的に腰は落として踊ること。その方がかっこよく見える」と指導していた。
阿波踊り、特に男踊りって、いかにも腰をいわしそうな踊りだわ…。

そうこうしているうちに18時。上空に花火があがって、いよいよ今年の阿波踊りが開幕した。だがまだ空は明るいため、花火が見えない。もしかしたら花火ではなく、爆竹かもしれない。まあそんなことはどうでもいい。
DSC_0018.jpg
ビルの屋上にデビルマンを発見。下界で行われている祭りを見物してるみたい。

私が有料演舞場に入れるのは20時半から。それまで無料演舞場で踊りを見ようと思ったら、甘かった。無料演舞場はどこも見物客で分厚い人垣ができており、そのすきまから踊りを見物。
DSC_0019.jpg
四国電力・徳島支店前も阿波踊り会場に。ここでは平和連の踊りを見物。

DSC_0023.jpg
踊り終わった連の人たちは、次の演舞場へと歩いて移動する。その様子を普通に見て、気軽に話しかけたりしている地元民。私のような観光客は、連の人たちの隣を歩くのも遠慮してしまうのだが。先に書いた事と矛盾するようだが、徳島市民にとっては有名連といっても、知り合いがその連に入っていたりして、「町の人気者」的な親しみのある存在なのかも。

DSC_0027.jpg
移動中も歌い踊っていた、サービス精神あふれる「ほると連」の人たち。祭りを心から楽しんでいるようで、見ている方も楽しくなる。

歩き疲れたので、幸町公園のベンチで休憩。座ってから気づいたが、目の前に集合写真を取るための椅子などが設置されていて、次々に色んな連がやって来て写真を撮っていた。中でも面白かったのは、徳島市国際交流協会連の人たち。メンバーの半分は外国人で、リーダーの黒人のお兄さんがカタコトの日本語で「ヤットサー!」と呼びかけていた。そして黒人のドレッドヘアーのお姉さんの、ハッピ姿のかっこいいこと。
DSC_0030.jpg

DSC_0034.jpg
高張り提灯を持つ白人のお兄さん。足元は足袋ではなくスニーカー。

DSC_0035.jpg
日本生命連の皆さんも記念撮影。
そんな風景をぼーっとベンチで見ていうるうちにだんだん空が暗くなってきた。演舞場の第二部は20時開場。街中がぞめきのリズムで沸き立つ中、人ごみをかきわけて南内町演舞場に向かう。

だがタイミングが悪い事に、ぽつぽつ雨が降り始めた。かと思うとまたやんだり。不安的な雲空の下、南内町演舞場に行くと、演舞場周辺には行列ができていた。
IMG_1205.jpg
南内町演舞場は新町川沿いに設けられており、入場を待つ間も、川からの風が心地よい。

IMG_1206.jpg
雨が降ったため座席が濡れていて、その清掃のため開場が20分ほど遅れた。ようやく場内に入って席につく。南内町演舞場の川側、A席。本当はS席が良かったけれど、一ヶ月前にはすでに完売していた。

IMG_1208.JPG
いよいよ開演。トップで踊りこんできたのは葉月連。トップだけあって、祭りのムードを盛り上げるとても小気味いい踊り。そして粋な黒ハッピのお姉さんたちの、腰を深く落とした踊り方が、かっこいいけどいかにも腰が辛そう。男踊りの自由奔放な乱舞も迫力満点で、後ろに座る若い男性がしきりに「すげえ!」と感嘆していた。

DSC_0037.jpg
この演舞場はびっくりするほど踊り子と観客の距離が近く、臨場感あふれる踊りが楽しめる。客の目の前まで踊りこんできた踊り子は、カメラを向けられると「どう?」とばかりに満面の笑み。撮られることに慣れているというか、プロである。
徳島市は観客もプロだ。「踊り子たちを盛り上げよう」という意識が高く、かけ声などで場を盛り上げるのがうまい。
たとえば昨日の鳴門市では、私が座った有料演舞場の周りの観客たちだけかもしれないが、目の前で連が踊っているのに、その向こうにいる吉本新喜劇の役者に目が釘付けで、「はよサインもらいに行って!」と子どもをたきつける親が何人かいた。だが徳島市ではみんな目の前の踊りに集中していて、拍手や歓声はもちろん、ここぞというタイミングで「いよーっ!」「かっこいいーっ!」などと盛んに声をかけていた。なんというか、踊る方もプロなら、見る方もブロ。踊り子も見る側も、「盛り上げ方をわかっている」という感じ。
対する鳴門市はいい意味で「ローカルなお祭り」で、時には新喜劇の芸人の方に目を奪われたりと、のんびりと自分のペースで祭りを楽しんでいる。それぞれに個性があり、どちらも楽しい。

DSC_0038.jpg
ほんま連。若い女性たちで構成されているという女ハッピ踊りの、あふれんばかりの健康美。笑顔も輝いていて、まさに「ピチピチ」という死語が似合う。この夜、このシーンだけアイドルのコンサート的な観客の盛り上がりを感じた(笑)。

DSC_0045.jpg
祭りがいよいよ盛り上がる後半、突然雨が降り出して、桟敷席にいっせいに傘の花が咲いた。そして、雨に負けじとますますエネルギッシュに踊る踊り子たちに声援が飛ぶ。

DSC_0048.jpg
通り雨はしばらくして止んだ。終盤は無双連、阿呆連と、人気連が立て続けに踊りこんできて観客の興奮もヒートアップ。写真は阿呆連。

DSC_0050.jpg
躍動する踊り子たちの、地面に映るシルエットもまた美しい。

旅行前に「鳴門と徳島はレベルが違う」と聞いていた。その「レベルの違い」を端的に感じたのは、実は子どもたちの踊りだった。徳島市の阿波踊り、特に有 名連の子どもたちはめちゃくちゃ上手い。鳴門市の阿波踊りでは、子どもの踊り子が出てくるといささかだらけていた私だが、徳島市では子どもたちの上手さに 終始目が釘付けだった。

そしてこの日、トリを飾ったのは「レレレの連」。アナウンスでは「人気連」と言っているし、トリを飾るからさぞかし凄いんだろうと思っていたら、脱力系の連だった(笑)。というか、あれを阿波踊りと言っていいのか。アイデアとネーミング勝ちという感じ。だが祭りを見終わった後、もっとも耳にこびりついたのが「レレレの連!」というかけ声なんだから、なんだか負けた気分。

DSC_0051.jpg
そしていよいよフィナーレ、南内町演舞場ならではの総踊りが始まった。これがあるから私はこの演舞場の二部のチケットを買ったのだ。鳴りもの隊が演奏しながら行進してくるさまは圧巻。
DSC_0055.jpg
鳴りもの隊の一人が、途中で桟敷席に上がり込んで笛を吹いていた。
踊り子たちもわりと整然と踊りながら行進していて、鳴門市の総踊りのような、連たちがごちゃ混ぜになって自由に乱舞する、というシーンはなかった。もっと乱舞すると思っていた私はちょっと意外だったけど、この演舞場は道幅が狭いので仕方ないのだろう。

IMG_1202.jpg
踊りが終わって演舞場を出たのが22時40分頃。23時の電車に乗るため夜道を急ぐ。ふと見上げると、ライトアップされたデビルマンが夜の町を見下ろしていた。
web拍手 by FC2
見る阿呆2015(1)
去年9月に仕事で徳島を訪れて以来、今、約一年ぶりに徳島に来ている。去年の徳島滞在中に徳島の人から阿波踊りのことを聞き、一度ナマで見たくなったからだ。

去年の徳島滞在記「徳島がアニメのマチだったとは」
http://still-crazy.jugem.jp/?eid=297

■8月11日・鳴門市
去年は和歌山港からフェリーに乗って徳島に行ったが、今回、事前に調べると、大阪市内から高速バスに乗って徳島に行くのと実はそれほど値段が変わらなかった。そこで今回は高速バスで行くことにした。JRなんば駅直結のOCAT内のバスターミナルから出発して、徳島駅まで3時間弱。退屈しそうだったので、バスの出発待ち中に、急に文庫本を買おうと思いついた。それも司馬遼太郎の『項羽と劉邦』が読みたい。幸いOCATには大きな書店が入ってるし…と思って館内表示を見たら、いつのまにか「コミックと雑誌」だけの書店になっていた。がーん。

仕方ないので、5分ほど離れた地下街の書店に行く。それほど大きな書店ではないので期待していなかったが、『項羽と劉邦』があった。らっきー!と思って値段を見たら、710円。た、高い……。だがそもそも本を買うこと自体、久しぶりだし。モノを増やしたくないので、本はもっぱら図書館で借りている。だが出発直前に読みたかった本にどんぴしゃで出会えたのは幸運だと思い、その本を購入した。
新品の本ならではの新鮮なインクの匂いは、やはりいい。
IMG_1197.jpg

買ったばかりの文庫本をかばんに入れて、バスに乗って出発。夢中で小説を読んでいるうちに、ふと窓の外を見ると海が広がっていた。もうすぐ鳴門海峡を渡るのだ。
IMG_1147.jpg

IMG_1149.jpg
徳島駅に着いたのは、定刻より30分遅れの14時半。今夜は鳴門で阿波踊りを見るので、この後すぐまた電車で鳴門駅に向かう予定だ。が、その前にお昼ご飯。バスに乗っている時から、「お昼ご飯は徳島ラーメン」と決めていた。いざ徳島について、さあどの店に行く?となると、やはり去年も行った「麺王」に足が向く。なんといっても徳島駅のすぐ近くだし、割とおいしいし。(というより、私はこの店以外で徳島ラーメンを食べたことがないのだが)
IMG_1150.jpg
この店のうれしいところは、カウンターに置かれた「ピリ辛もやし」が自由に食べられること。もやしがラーメンに入ってるんじゃなくて、ピリ辛に味付けされて、別にビンに入っているのだ。このもやしが、濃厚なラーメンとよく合う。口の中がさっぱりするのだ。

麺王
http://www.7-men.com/menou.html

一年ぶりに徳島ラーメンを食べた後は、チュロスを買いに徳島駅に戻る。去年ここに来たときにも行ったチュロス専門店「チュチュチュロスカフェ」で、支店が徳島駅前にできたと聞いていたから。しかし本当に、去年行った店にしか行ってない……開拓者精神はないのか、開拓者精神は。

チュチュチュロスカフェ
http://chuchuchurros.com/

チュロス専門店は駅前というより「駅横」にあった。ここではチュロスだけ買う予定だったが、揚げあがるのを待ってる間にメニューを眺めていたら、ソフトクリームを発見。カップとコーンの2種類あったが、いつもコーン派の私はこの時も何も考えずにコーンのソフトクリームを買った。
だが外は猛暑。店を出て10歩も歩かないうちにソフトクリームがとけだし、コーンを伝って下にぽとぽと落ちた。焦って、歩きながら急いで食べる。だってこの後すぐ、鳴門駅行きの電車に乗らないといけないし。あんなに急いでソフトクリームを食べた経験はあんまりない。

だがどんなに焦っても、ソフトクリームってそんなに一気に食べられるものではない。結局、2/3ほど食べたところで、残りを駅のホームのゴミ箱に捨ててしまった。食べかけのソフトクリームを捨てたなんて初めてかも。何の考えもなしにコーンタイプを選んだ私が馬鹿だった。

徳島駅から鳴門駅へは、一車両しかないワンマン電車に乗って行った。各駅停車で、たぶん乗ってる観光客は私ひとり。他は地元民ばかりのようだった。
と思っていたら。鳴門駅に到着したとき、私の他にも電車の写真を撮ってる人が2名いた。うち一人はお遍路スタイル。
IMG_1153.jpg
鳴門駅。思っていたよりずっと小さな駅で、駅前の通りも、阿波踊り開催期間中とは思えないほど閑散としていた。

駅近くのホテルにチェックイン。事前にネットで「JR鳴門駅西側特設演舞場」のチケットを買っていた。18時半開場なので、しばらくホテルで休んでから、18時すぎにホテルを出る。

着いた時は「ほんとに阿波踊り開催中なのか」と思うほど閑散としていて、お祭りムードがみじんもなかった街だが、この時間になると屋台が立ち並び、浴衣姿の女性や子どもたちが行き交っていて、お祭りムードをかもし出していた。私も自然と気分が浮き立ってくる。観光客が押し寄せるような大きな祭りじゃなくて、いかにもローカルな、地元民のための祭りというこじんまりした雰囲気が心地よい。
IMG_1156.jpg
鳴門駅前に設けられた演舞場。日が沈もうとしている中、静かに祭りの開催を待っていた。

いい席で見たかったので、開演30分前に演舞場に入場し、本部席の斜め向かい側、最上段席に座る。阿波踊りの連は、本部席の前でもっとも力を入れて踊ると聞いていたからだ。

今年の鳴門市阿波踊りは吉本新喜劇とコラボしており、最終日のこの日も新喜劇の役者4人が参加していた。司会のアナウンスで四人の名前が紹介されたが、新喜劇に詳しくない私は末成由美さんしか分からなかった。が、演舞場にいる他のお客に圧倒的に人気があったのはすっちー。踊っているときはあちこちから「すっちー!」の声が飛び、席に座るとサイン責めにあっていた。
IMG_1180.jpg
客席でじっくり観覧する暇もなく、次から次にサインを頼まれていたすっちー(左から2番目・左端は末成由美さん)。
だが私は吉本新喜劇の美魔女、由美姉さんに視線が釘付け。なんたってこの黒いモンペ姿の粋なこと!
IMG_11620.jpg
踊る姿も、吉本の四人の中で一番サマになってたように思いますよ姉さん。
IMG_1189.jpg
左から2番目が由美姉さん、左から3番目がすっちー。

吉本新喜劇の四人が「うず潮連」の先頭に立って躍り込んできて、この夜の阿波踊りがいよいよスタート。
IMG_1170.jpg
一言で阿波踊りといっても、連によってそれぞれ個性がある。この連の「女踊り」は夜空に映える鮮やかなピンクの衣装、そして弾むような踊り方に特徴があった。

IMG_1174.jpg
優雅な女踊りもいいけれど、私が好きなのは男踊り。ダイナミックで力強い。「暴れ踊り」は特にパワフル!

IMG_1178.jpg
女性なのに男性のような衣装を着て「男踊り」のような踊りをしている女性もけっこういた。そこらへんは「男と女」の境目が柔軟に変化してきているのかも。
追記と訂正:阿波踊りを二日続けて見て気づいたが、実はこの踊りは「女ハッピ踊り」というらしい。阿波踊りについて何の知識もなしに、分かった風な感想を書いてしまった。

IMG_1179.jpg
鳴りもの隊(と司会の人は呼んでいた)が奏でるお囃子は、ブラックミュージックのようなうねるリズム、グルーブ感があって心地よい。このお囃子も、連によって個性はさまざま。着物の着こなし方も、人それぞれに微妙に違う。袖をまくりあげている人とか。


ほとんどの連は出口付近で、フィナーレとばかりに盛大に太鼓を叩き上げる。この時に腰を揺らしてリズムを取るのが官能的。
写真は、トップで踊りこんできたうずしお連。鳴門市の有名連らしく、徳島市の阿波踊りにも参加して、その迫力ある太鼓で観客を湧かせていた。

IMG_1185.jpg
途中で、一般客も参加できる「にわか連」の踊りがあった。先頭に立って踊るのは鳴門うずしお大使の二人。その後ろで踊っている着ぐるみは、見るからに暑そう。中の人は大丈夫なのか。

それぞれの連にはけっこうな割合で子どもたちも混じっており、拙いながらも懸命に踊っているのだが、そんな子どもの踊りを見ても「かわいい」とかあんまり思えない心の冷たい私。「ぎこちない子どもの踊りより、もっと上手い大人の踊りが見たい」とか思っていた。でも子どもたちも参加できるからこそ、こうして阿波踊りが脈々と受け継がれていってるんだよね。

「鳴門市連」というのもあって、鳴門市長が先頭に立ってノリノリで踊っていた。この市長は最後の総踊りでも皆の真ん中でエネルギッシュに踊っていた。「踊る市長」だ。
また鳴門らしく、踊りで「うず潮」を表現していた連も多かった。
しかしどの連も、基本的にその連の人たちはみな同じ振り付けだから、「上手な人」とそれ以外の人との差がよく分かる。そして自然と上手な人を目で追い続け ることになる。身のこなしが軽やかな人とか、手先・足先がぴんとまっすぐ伸びている人。そういう人は優雅で、疲れているはずなのにそれをちっとも感じさせ ない。
DSC_0029.jpg
それぞれの連の個性あふれる衣装も楽しみ。こちらは徳島名産のすだちを連の名前にしている「すだち連」。衣装もすだちがモチーフ。

DSC_0007.jpg
たくさんの連を見たが、私が一番「上手い」と思ったのはのんき連かも。先にアナウンスで「歴史がある連」と聞いたから、先入観込みかもしれないけれど。

DSC_0032.jpg
フィナーレは、鳴門市阿波踊振興協会に所属している6つの連による総踊り。これは圧巻。というか私が今まで抱いていた阿波踊りのイメージ(テレビや本でよく見る)は、この総踊りなのだと初めて分かった。

夢中で見ていたら、コンデジを桟敷席の下に落としてしまった。なので仕方なくその後はガラホ(ガラホ×ケータイのSHF31)のカメラで撮ったのだが、なんとコンデジよりキレイに撮れた(笑)。
踊りが終わってお客もほとんど帰ってから、係の人に「コンデジを桟敷席の下に落とした」と言ったら、釣り竿のようなもので拾い上げてくれた。ああいう釣り竿が用意されているということは、けっこうよくあるアクシデントなのかも。

一夜明けた今日は、徳島市の阿波踊りを見る予定。聞くところでは、鳴門市より規模が大きく、踊りのレベルも高いらしい。だがたとえそうだとしても、生まれて初めて見た阿波踊りとして、この鳴門市の阿波踊りはあたたかい思い出とともにいつまでも胸に刻まれることだろう。

web拍手 by FC2
徳島がアニメのマチだったとは。
仕事で徳島に行ってきました。和歌山港から南海フェリーに乗って。
船の甲板に出ると、晴れ渡った9月の秋空。海面が陽を浴びてキラキラと輝いていました。
5.jpg

和歌山港から約2時間で徳島港に到着。そこからバスで徳島駅へ。取材まで時間があったので、徳島駅前を散策しました。駅からちょっと歩くと、目の前にどんどん眉山が近づいてくるのが圧巻。こんな街の真ん中に、ホントにそこだけ「にょきっ」と山が生え出ているみたいで。独特の景観でした。
6.jpg

目指しているのは商店街にあるという「chu chu churros cafe(チュチュチュロスカフェ) 」。スペインからチュロス製造機を輸入して、揚げたてのチュロスを食べさせてくれると知って興味津々。徳島に行くと決まった時から、なんとしても行きたい店ナンバーワンになりました。ぶっちゃけ、取材先の和食店よりよっぽど興味あった(笑)。

そのチュロスカフェがある商店街の入口に、こんな立て看板発見。アニメのマチ徳島って……知らんかった。徳島といえば阿波踊りじゃないのん?
15.jpg

でもその阿波踊りも、こーゆーアニメキャラがPRしてるポスターが3種類くらい、街のあちこちに貼られてありました。
11.jpg

お遍路PRポスターもアニメキャラ。どうやら徳島は役所ぐるみで「アニメの街」として推してるらしい。
12.jpg

ちなみにアニメの阿波踊りポスター、取材した和食店の人に聞くと、数年前のポスターはすごい高値がついたらしい。それって「NARUTO -ナルト-」のポスターかな。徳島駅前の「そごう」の地下飲食街で、そのポスターを貼ってる店を見つけたし。

これも和食店の人に聞いたんだけど、阿波踊りのポスターは毎年数種類が発売されるそうな。で、気に入った年のポスターを、年が変わってもずっと貼り続けている店が多いとか。毎年違うポスターが発売されるからって、「今年のポスター」に張り替えることはないらしい。
その和食店が壁に貼っていたのがこれ。「うちの店の雰囲気に合っているのは、アニメじゃなくこっちだから」と。
13.jpg

数種類の阿波踊りポスターを、コレクションのように壁にずらっと貼っている店もありました。和食店の近くのラーメン店がそれで、壁にはアニメ版の阿波踊りポスターがずらり。

そんな「アニメのマチ徳島」の風景を眺めつつ、たどりついたのがこのチュロスカフェ。
9.jpg
平日のお昼時という時間帯からか、店内にお客は私ひとり。思ってたより流行っていないのかとちょっと不安になったけど、揚げたてのチュロスはモッチモチでおいしかったー。これが本場スペインのチュロスの味なのか。今までチュロスだと思って食べてたのはいったい何だったんだ。

7.jpg
お店は徳島駅から徒歩10分ほど。他の場所にも2号店があり、もうすぐ徳島駅前に3号店もオープンするそう。お勘定の際、店員さんが教えてくれました。
その際、この店のすぐ近くにある阿波踊り会館は入場無料ですか?と聞いたところ、「たぶんそうです」との返事だったので、いそいそと行ってきました。しかし無料だったのは一階の土産物売り場だけだった……当たり前といえば当たり前か。
そういえばこのチュロスカフェ、店内の壁に阿波踊りポスターを一枚も貼ってませんでした(笑)。そりゃそうだ。このレトロアンティークなヨーロッパ風空間に阿波踊りポスターは似合わなさすぎる。
4.jpg

レトロといえば徳島駅前は全体的に昭和な雰囲気が漂っていました。この看板とか。このお店、他にも傘を売ってたりクリーニングもやってたりと、「何でも屋」みたいな感じだった。
3.jpg

この後、取材先の和食店へ。その後は、「徳島でなんとしても行きたい店ナンバーツー」だった「イルローザ クレメント店」へ。お目当てはこの店のカフェメニューのひとつ「紅茶&スコーンビュッフェ」(780円)。
たった780円で、20種類前後の紅茶が飲み放題、5種類前後のスコーンが食べ放題!太っ腹すぎる。ただ一つ残念なのは、スコーンにつけるコンフィチュール(ジャム)は用意されていても、生クリームは用意されていないこと。価格が1000円になってもいいから、スコーンに生クリームもつけられたらもっと嬉しい。
2.jpg

このお店、紅茶の種類がとにかく豊富。紅茶専門店にしかないような珍しい茶葉を6種類ほど楽しみました。あ、ちなみにこの店にも阿波踊りポスターは貼られてなかった(しつこい)。
14.jpg

しかし去年行ったポーランドのアウシュビッツ訪問記もまだ書いてないっていうのに、徳島旅行記(というほどのもんでもないけど)を先に書くっていうのはどうなのよ(笑)。まあ最近行った海外の方がどうしても「記憶が鮮明なうちに書かなきゃ」という意識が強いし。ええ、徳島も大阪人からしたら「海外」ですし。
web拍手 by FC2
大塚国際美術館に行ってきた。
 仕事で徳島市に行ったついでに、ちょっと足を伸ばして、鳴門市にある大塚国際美術館に行ってきました。行く前は「コピー絵を見てもな〜」と、正直あんまり期待してなかったんだけど、予想以上に楽しめました。
私の好きなドラクロワの絵が5枚も展示されていたことも、予想以上で嬉しかった。この美術館に展示されるということは、「西洋を代表する名画」として選ばれたということだから。それも5枚も。

6.jpg
ドラクロワといえばなんといっても上の「民衆を導く自由の女神」が有名だけど、でもその絵の知名度の割に、それを描いた画家の名前は日本ではほとんど知られていないという……(似たような例に「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠」の画家ダヴィッドがいる)。私が「ドラクロワが好き」と言っても、「誰ソレ」な反応ばかりだったぞ今まで。
本国フランスのルーヴル美術館でも、ドラクロワの絵が展示されている部屋の隣にモナリザが展示されているおかげで、「モナリザの絵の前はいつも黒山の人だかりなのに対し、ドラクロワのコーナーは閑散としている」という話を高校時代に本で読んで以来、私はますますドラクロワびいきになったという思い出が。

でも! この大塚国際美術館では、そのモナリザがある部屋と、ドラクロワの絵がある部屋は遠く離れている!これは嬉しい。やっぱり「民衆を導く自由の女神」は有名で、若い大学生風の女子も「あ、私これ知ってる!」と嬉しそうに、絵の前で記念撮影していました。初老の女性も「あ、これ教科書で見た」と、じっくりその絵を鑑賞してました。まあ、それ以外のドラクロワの絵(「アルジェの女たち」とか)はみんなほぼ素通りだったわけですが。
でもこれは何もドラクロワの絵に限った話ではなく、ごく一部の「誰もが知ってる名画」以外は、ちらっと見ただけで素通りする人が多かった。特に若い人に。よく見たパターンとしては、「有名な絵」はとりあえず写真を撮る(でもその絵の解説を読む人は少ない)。でもその他の「それほど有名ではない絵」はちらっと見ただけで素通り、という人が多くて、「名画のありがたみ」というのが普通の美術館より薄いな〜、と。やっぱり銅板画だからなのか。
「とりあえず写真を撮る」というのも、「写真撮影OK」なこの美術館ならでは、なんだろうけど。撮影OKなぶん、ごく一部の「誰もが知ってる有名な名画」と、そうではない名画の「差」が、普通の美術館よりもくっきりと浮き出ている気がした。つまり同じ名画でも明確にランク分けがされている。
で、さらにその「誰もが知ってる有名な名画」の中にもランクがあって、ただ写真を撮るだけじゃなく、「自分もその絵と一緒に撮影される」絵と、そうでない絵に分かれる。たとえばムンクの「叫び」の前では、若い女性グループが絵の前で入れ替わり立ち替わりして、自分も両頬を押さえて口を開ける「叫び」のポーズをとり、それを友達が笑いながら撮っていた。たぶん後でフェイスブックなどのSNSにupするんだろうけれど、今の時代では名画もそんな風に「自分アピール」の手段に使われるのか……と実感。でもそうやって時代とともに「消費のされ方」が変わっていくからこそ名画、という気もする。そうやって「自分アピール」の手段に使われながらも生き残っていくのが名画なんだろうなあ、と。

批判めいたことはこれくらいにして、素直な感想を行程順に。私は徳島駅から徳島バスに乗って行ったんだけど、平日だからか、朝9時発の「鳴門公園行き」バスは意外と空いていた。
1.jpg

バスに揺られて約70分、目的地の「大塚国際美術館前」で降りたお客は私含めて7、8人ほど。
私は前日に前売り券を買っていたので、それを見せて入館。入ってすぐの場所にミュージアムショップがあり、そこで携帯式音声ガイドを借りたんだけど、レンタル代が500円なことにまず驚く(笑)。

4.jpg
システィーナ礼拝堂を模したシスティーナ・ホール。私はこのミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の絵だけを集めた画集を持っていて、でもここ10年くらい読み返していなかった。なのでどこか懐かしい気持ちで天井を見上げた。

2.jpg
神がアダムに「命」をさずける場面。互いの指先が今にも触れ合おうとしている、この緊張感が好き。
でもいつも思うけど、ミケランジェロの描く裸体って色気がない。だからこんな大空間の天井にぎっしり裸体を描いても「いやらしさ」がないんだろうけど。むしろ神々しい。

平日だからか、館内のお客は大学生風の若者や、定年後のシニア層、また子育てを終えた主婦のような人たちが多かった。
館内ガイドツアーに参加してるのはだいたいおじさんおばさんたち。若い人は先にも書いたように、有名な絵を見つけるとカシャッと撮って、そうじゃない絵はちらっと見ただけで素通り、とマイペースで鑑賞してる人が多かった。
3.jpg
システィーナ・ホールでガイドのお姉さんの解説を聞く皆さんも、年配の人が多い。中にはガイドの方を見ずに、天井画を見上げている人も。



私にとってはシスティーナ・ホールよりも印象的だった、スクロヴェーニ礼拝堂。こういう中世のキリスト教絵画って、普通の美術館の展示方法だとあんまりその良さが伝わらなくてつい流し見しがちなんだけど、ここではこんな風にその絵が描かれている空間ごと再現してくれてるから、ひきこまれるような臨場感がある。

12.jpg
古代壁画も、中世のキリスト教絵画と同じように、普通の展示方法だとつい流し見しがちなジャンルの一つ。でもこんな風に壁画のある洞窟ごと、また聖堂ごと再現した環境展示だと迫力がちがう。あえて照明を落としてある洞窟や聖堂の中に入ると、なんとも厳かな気分に。当時の人々の素朴な信仰心が伝わってくるようだった。
11.jpg

7.jpg
こんな風に、壁画の「欠けている部分」まで忠実に再現しているのがすごい。

9.jpg
幻想的な壁画「貝殻のヴィーナス」。
こういう飾り棚(?)も銅板で再現。
10.jpg

5.jpg
同じく環境展示の、モネの「大睡蓮」。その絵の周囲には実際に睡蓮の池があるんだけど、この池を囲むテラス席が「持ち込んだ食べ物用の飲食スポット」としてこっそりおすすめ。
美術館の公式サイトに「お弁当は持ち込めますか?」というQがあって、そのアンサーとして「原則としてご遠慮いただいております。館内にレストラン・カフェがございますのでこちらをご利用ください」とある。なのであんまりおおっぴらにお弁当は食べられないけど、おにぎりくらいならこのテラス席のテーブルで食べられると思う。館内レストランのテラス席なんだけど、他のお客はみんな室内席で食べていて、店員もテラスの方には回ってこない。「館内レストランは高い割に味がいまいちだし、そんな時間があれば鑑賞にまわしたいから、ささっとおにぎりを食べる場所がほしい」という人にはおすすめ。あと、なるだけ安く出費を抑えたい人にも(笑)。

それにしてもロンドンやベルリンの美術館で「本物」を見たことのある絵って、やっぱりちゃんと覚えてるんですね。また日本で、銅板画として再会できて嬉しい一方、「やっぱり本物とは違うな」と実感したり。

2014-09-10 15.53.50.jpg
イエス以外の人物を全て現代風に置き換えた「マグダラのマリア」。こうした、今まで知らなかった名画にもたくさん出会えた。
他にもダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の修復前と修復後を向かい合わせに展示して、修復後の絵を「これがダ・ヴィンチが描いた本当の最後の晩餐」と解説してたけど、馴染みのある修復前の絵の方がどうにもダ・ヴィンチらしい絵に見えたりとか、いろいろ興味深かった。
そんな楽しくて勉強になる美術館だったけど、ただ一つ悔いが残ったのが、2階にあったテーマ展示「レンブラントの自画像」を見逃したこと。そんな展示があったことすら知らなかった、知ってたら絶対に見逃さないのに!なんたる失態。帰りのバスの中で、改めてパンフレットを見ていた時に、そんな展示があったことに初めて気づいた……。レンブラントの自画像大好きで、ロンドンのナショナル・ギャラリーでその一つを見たときはしばらく絵の前から離れられないほどの衝撃を受けたものだった。

14.jpg
でもその代わりに、これも大好きなビング・クロスビーを題材にしたポップ・アートに出会えたからいいか。こうしたポップ・アートってウォーホールのマリリン・モンローが有名だけど、クロスビーもその題材になっていたとは知らなかった。

10時過ぎに入館して、美術館を出たのが16時半。まだまだ鑑賞したかったけど、16時43分発のバスが徳島駅行きの最終便だったので、仕方なく美術館を後にした。見逃した「レンブラントの自画像」を見るために、またきっといつか訪れると思う。
web拍手 by FC2
TweetsWind