何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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ダッフルコートの存在意義とは。
前から欲しいと思っていたダッフルコート。数年前からのダッフルブームで、この時期になると色んなブランドからダッフルが発売される。一見選び放題に見えて、実は違う。まず、一番よく出回っているショートダッフルは寒いからイヤ(笑)。一般的なメルトン生地も子どもっぽく思えてイヤ。今の流行らしい、タイトフィットなダッフルは窮屈そうでイヤ。一昔前のダボダボダッフルとまではいかなくても、もうちょっとゆったり着こなせるサイズ感がいい。
色はキャメルがいいけど、これもよく見かける、濃いめのキャメルはイヤ。どちらかというとベージュに近い色がベスト。
とまあ、要は私がわがままなせいで、欲しいと思えるダッフルにはなかなか出会えませんでした。私が求めていたのは、「生地はヘリンボーン織り・色はベージュに近いキャメル・丈は膝からちょっと上・サイズ感はややゆったりめ」というもの。この条件に当てはまっていれば、別にブランドはなんでもよかった。しかし先日「これだ」と思って購入したのは、グローバーオールのダッフルでした。

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羽振りがいいように思えるかもしれないけれど、古着です(笑)。なので1万弱で買えてしまった。古着なのでところどころ毛羽立っていたりと若干の使用感はあるものの、全体的に美品で満足。着丈はちょうどお尻が隠れるくらいで、この点だけはもうちょっと長めが希望だったけど、届いたものを着てみると、私の身長(155cm)だとこれくらいがベストかもしれない。

しかしいろいろとマニアックな条件をつけていたつもりだったのに、それにぴったり合致したのが、結局は定番中の定番ブランドだったというのが意外。これまでショップで見てきたグローバーオールのダッフルって、裏地がチェック柄のメルトン生地のものばっかりで、ハナから選択肢になかったんですよね。なので同じ定番でも、オールドイングランドのダッフルの方に惹かれつつあった。あっちはヘリンボーン生地がメインのようだし。ネックは、私には大きすぎるように思えたこと。実際に試着したことはないんだけど、表示サイズを見る限り、私が着ると「コートに着られてる感」たっぷりになることは想像できた。私はダッフルは「ちょっと大きめのものをゆったり着る」のがかわいいと思っているんだけれど、あまりにも大きすぎるのはさすがにみっともない。
かといってタイトすぎるのもイヤ(わがまま)。実際、一ヶ月ほど前にショップで、「英国のキッズ用を日本の女性用に別注した」というグローバーオールのダッフルを試着してみたんですが、まあタイトなこと。店員のおじさまは「ダッフルといえば昔はダボッとしたイメージでしたが、最近はこういうスリムなシルエットになっている」と説明してくれたけど、確かに見た目はスリム。しかし着心地が窮屈でイマイチ。もうちょっとゆとりがほしい。それに「キッズサイズを日本の女性用に別注で作り直した」というけれど、ほんとに? それにしては袖丈が短くて、「つんつるてん」という言葉が浮かんだ(笑)。袖が短すぎて、なんだか「お下がり」っぽいんですよね。
そして重い。ずっしりと肩にのしかかるような重さ。まあその分、確かにあったかいんですが。メルトン生地も、実際に見ると思ったほど子どもっぽくは見えなかったし。でも私はやっぱり、独特のうねりがあるヘリンボーン生地の方がいいなあ……と決意を新たにした数週間後に、先日、購入したグローバーオールのヘリンボーンダッフルに出会ったのでした。グローバーオールといえば「裏チェックのメルトン」のイメージが強くて、実際、女性に売れているのもそのタイプ(裏地のチェックがかわいいから?)のようで、ヘリンボーンタイプのものはあまり出回っていないよう。そういうところもまた、私のマイナー志向をくすぐるんですよね(笑)。

しかしいいことずくめとは限らない。ネットで購入したので試着できなかったんですが、コートが届くまで、メルトン生地のダッフルよりも軽いんじゃないか、というかすかな期待がありました。あっちは裏地がチェックの二枚仕立てなのに対し、ヘリンボーンタイプは裏地なしの一枚仕立てだし。しかし届いたものを着てみると……重い。さすがダッフル、一枚仕立てですら重いとは。それでこそダッフル。と妙に感心してみたり。
でも元々は男たちが着る防寒の作業着だったというし、軽さよりも「暖かさ」を優先させたつくりなのは仕方ないか。そして作業着として、荒っぽい扱いにも耐えられる頑丈さ。暖かさと頑丈さを実現させるために、ダッフルコートが重くなったのも必然といえる。
ダッフルの起源については諸説あって、北欧の漁師が作業着として着ていた説や、チロル地方の農夫の作業着だったという説、フランドル地方の羊飼いの作業着だったという説もある。ただ一つ共通しているのは、外で働く男たちの作業着だったということ。私がダッフルに惹かれる理由もそこにある。何よりも「実用第一」なつくりで、ひとつひとつの部位が機能的で、意味がある。ダッフルの特徴であるトグルとループも、手袋をしたまま外したりとめたりできるよう、ああいうつくりになっている。決してデザイン優先でトグルにした訳ではないのだった。

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かぶっている人を今まで見たことがないフードもそう。昔はちゃんと使われていて、作業中の雨や雪から頭を守ってくれたのだろう。今ではほとんど使われなくなり、単なる「飾り」になってしまっているけど、元はちゃんと意味がある。そして意味があるからこそ、それらひとつひとつが欠かせない機能美として「ダッフルコート」というものを作り上げている。
その一方で、このフードがあることも、ダッフルが重いことの一因だと思う。胸と背中の上部が二枚仕立てになっているのも重さの一因だと思うけど、あれは暖かいからヨシ。しかしフードは実際にかぶることはほとんどないし、「着こなし例」を紹介している雑誌やネットのページでも、かぶっているのを見たことがない。コートについているフードをかぶらず、わざわざ別の帽子をかぶっている人もいる。そういうのを見るとちょっとフードがかわいそう。せっかく頭のサイズに合わせてぴったりとかぶれるよう、フードサイズがアジャスタで調節できるようになっているのに。しかしそのアジャスタ機能も、実際には使われないことがほとんどって訳か。なんだかもったいない気がする。



そしてトグルやフード以上に、私が「これがあるからこそダッフル」と思っている部位がチンウォーマー。日本のブランドが出しているダッフルにはチンウォーマーがないものがあったりするけど、あれは正確にはダッフルではない。ダッフル風コートである(きりっ)と言いたくなるほど、私は「チンウォーマーがあってこそダッフル」だと思っている。だからダッフルを着るときは、どんなに寒くてもマフラーはしない。せっかくのチンウォーマーが隠れてしまうから。というか、本当に極寒の日はダッフルじゃなくて素直にダウンコート着ます(笑)。いくらダッフルが好きとはいえ、やはり寒さには勝てない。
しかしそう考えると、ダウンコートほど暖かくもなく、そして普通のウールコートよりも遥かに重いダッフルコートの存在意義ってなんなんだろう。なぜ私はこの重くて、そのわりに布の隙間から寒風を通すコートを我慢しながら着ているんだろう。これは修業か? 私は亀仙人か? 重さに耐えているとふとそんな思いも浮かぶけれど、偶然ショーウィンドーに映った自分の姿を見ると、やっぱり「ダッフルっていいな」と思う。ただ普通に着ているだけなのに、独特の雰囲気がある。こういう雰囲気のあるコートってなかなかない。その雰囲気がどこから生まれるのかと考えると、やっぱり行き着くのはコートの持つ伝統と、機能美。機能性ではなくて機能美。単なる機能性なら、今では「軽くて暖かい」ダウンコートの方がすぐれている。だがダッフルには、長年に渡って機能性を追求した結果生まれた、道具として完成された美しさがある。だから、さっと無造作に羽織るだけでなんだか絵になる。ダウンコートだとこうはいかない。
元が作業着だから、「洗練されたデザインにしよう」という意識がこれっぽっちも感じられないところもいい。素朴で無骨。それでいてどこか親しみやすく、見るとなんだかほっとする。この「ぬくもり感のある見た目」というのも、冬の衣類としてはけっこう重要なんじゃなんだろうか。(そして夏の暑い時期にはあまり見たくない衣類でもある)

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裏のパイピングも丁寧で、いかにも丈夫そう。このダッフル、ブランドカラーは「オートミール」となっていて、確かにキャメルでもベージュでもない、なんとも表現しがたいニュアンスカラー。しかしオートミールって、なんだかアメリカっぽくて微妙(笑)。せっかく英国のブランドなんだから、ここはちょっとおしゃれに「ミルクティー色」と呼びたい。英国で紅茶といえばミルクティーだし。4年前、ロンドンを旅した時に飲んだ香り豊かなミルクティーを思い出しながらこのコートを着よう。そう思うと、なんだかすごくおいしそうな色に見えてきた(笑)。

11.25 追記
ダッフルコートの存在意義について、もうひとつ発見したので追記しておく。それは「膝にかけると、たちまち暖かい膝かけに早変わり」するということ。冬になると飲食店では膝かけを貸してくれることも多いが、ウール100%の分厚いダッフルなら、店に用意されている膝かけよりもずっと暖かい(そのぶん重いけど)。
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こんにちは、はじめまして。
"ダッフルコート 着こなし"でこちらの記事にたどり着きました。
自分も実は全く同じグローバーオールのヘリンボーン、色も全く同じのダッフルコートを持ってます。思い入れが強いのでめえこさんが書いてる文章に強く同感を持ちながら読ませて貰いました。
(チンウォーマーの所ははニヤニヤしちゃいました笑)
とても素敵な文章でいい気持ちになりました。他の記事もこれから読まさせてもらいます。
ヒカルヒカル | 2015/02/23 18:49
ヒカルヒカル様、はじめまして。コメントありがとうございます!
同じブランド、同じ色だけでなく、同じヘリンボーンというのがスゴい!びっくりしました。ということはヒカルヒカル様も、理想のダッフルコートを求めて、ネットも含めてあちこち探したクチですか? でないとなかなかこのダッフルには巡り会えないですよね。で、ようやく巡り会えたぶん、思い入れも強くなったと…。私も全く同じです^^

チンウォーマーはやっぱりダッフルには欠かせないですよね。あんな小さなパーツなのに、留めるとびっくりするくらいあったかい。そして「見た目」もぐっと引き締まる。あのチンウォーマーに、ダッフルの「ダッフルらしさ」が凝縮されてる気がします。

同じダッフルを愛する「同士」に、共感してもらえてとっても嬉しいです。今後も互いに、ながーく愛用していきたいですね。
めえこ | 2015/02/24 11:26
コメントへの返事、ありがとうございます。
実は自分がこのダッフルコートを購入したのは、20年前なんです。就職して初めて貰ったボーナスをつぎ込みました(笑)
小さい頃からダッフルコートのフォルムと雰囲気が大好きで、大学時代にグローバーオールのヘリンボーン製を見て『これが理想のダッフルコートだ!いつか欲しい!』と衝撃と憧れを抱き、就職する前から自分のボーナスの使い道は決まりました。
ボーナス下ろして行きつけだった店に行き、色も迷いに迷って(アーモンドグリーンって薄い水色と)、何回も試着して買った時の嬉しさはまだ覚えてます。
今でも私服に(たまにスーツに)愛用し、大切なコートです。年取っておじいになっても着こなして、(いませんが)子供や孫に受け継ぐのが夢です。

勝手に長々とすみません。ついつい語ってしまいました。でもなんとなくですが、ダッフルコートには物語やエピソードが似合うと勝手に思ってます。街中でダッフルコートを着て似合っている人を見かけるとドラマを想像してしまいます。

まだ春までもう少し時間がありますので、お互いに愛用して行きましょう。
ヒカルヒカル | 2015/02/24 22:06
ヒカルヒカル様

ダッフルコートにまつわる素敵なエピソードを教えてくださり、ありがとうございます^^
私は古着をネットで買いましたが、ヒカルヒカルさんは実店舗で、何回も試着して買ったんですね! うらやましいです。私もそういう買い方をしてみたかった…。
初ボーナスをつぎこんで、たくさんのダッフルコートの中から今の一着を選んだのだから、それはもう、思い入れもひとしおだと思います。ヘリンボーンはやっぱり、あの「うねり」からくるさりげない生地の光沢が、上質感があっていいんですよね。

ダッフルコートには物語やエピソードが似合うというのも、全く同感です。決して安い物ではないから、買った時には、ヒカルヒカルさんのように初ボーナスをつぎこんだりとか、みんなそれぞれに、きっと何らかのエピソードがあるはず。
私はダッフルも含めて、その人が着ているコートには、その人の「生き様」みたいなものがあらわれてる、と感じます。どんなコートを着ているかで、その人がどんな人なのかまで、なんとなく分かるような。そんな訳でダッフルコートを着ている人を見かけたら、勝手に親近感を覚えたりしてます(笑)

思い入れがつまったダッフルコート、ぜひ子孫に受け継がせていってくださいね。
めえこ | 2015/02/26 11:18
COMMENT









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