何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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火星年代記
※ネタバレあり。

『火星年代記』
レイ・ブラッドベリ/小笠原豊樹 訳 ハヤカワ文庫

ブラッドベリって、自国アメリカを批判的にとらえているように見えて、実は自国大好き、自分の住む町大好きな人だったんだろうなあ……というのが率直な感想。だってせっかく安全な火星に移住してきた地球人たちが、地球で核戦争が起こったとたん、故郷が心配になってほとんど地球に帰ってしまうんだもの。ありえない。私ならぜったい戻らない。わざわざ死にに行くようなものだもの。
だがこの作品の地球人たちはいっせいに地球に戻る。なぜ?「故郷を見捨てられないから」という理由だけでは弱い気がする。しかしこの作品では、「あえて地球に戻る理由」はそれ以上深く追求されない。きっとブラッドベリ自身が「故郷や故郷の人々が危険にさらされたら、戻るのが当然」と考えていたからだろう。
……でもなあ。核戦争をおっぱじめた地球から逃げるならともかく、わざわざ戻るっていうのは、愛国心の薄い私にはちょっと理解できない。それまでは作品世界にひたりきって読んでいたものの、この部分がどうにも理解できないから、ここから先はあまり感情移入できずに読み終えてしまった。
せめて戻るとしても家族全員じゃなくて、戻るのは父親だけで、母親と子どもは火星に残るとかすればいいのに。なぜ家族そろって、放射能うずまく地球に戻るんだろう。これって被爆国に住む日本人と、そうではないアメリカ人との「核の恐ろしさへの認識の違い」だろうか。この作品の地球人たちはたぶん、核戦争を始めた地球に戻っても、軍人として戦闘に参加しなければ、町で安全に生活できると思っていたのではないだろうか。放射能の恐ろしさを知らないというか。「優しく雨ぞ降りしきる」の一家も、核爆発の光線で一瞬にして亡くなったようだし。放射能を浴びてじわじわと死んでいった……というような描写はどこにもない。

それにしても第三探検隊までが火星人に殺されて、いったいどうやったら地球人は火星人に受け入れられるんだろうとドキドキしながら読んでいたら、次の話ではあっけなく火星人が絶滅していて拍子抜け(笑)。地球人が火星人に受け入れられていく「過程」を、もうちょっとじっくり読んでみたかった気もする。

それと物語のラスト、火星に残った「最後の地球人」が、なぜウォルター・グリップではなかったのだろう。向こう100年間食いつなげるだけの食料を冷蔵庫にためこんでいたはずなのに。地球に戻ろうというワイルダー隊長の誘いも断ったのに。彼はいったいどうしたのだろう。どこに行ったのだろう。彼が主役の「沈黙の町」は好きな話の一つだ。全体的にコメディタッチなんだけど哀愁がある。できれば物語の最後に彼が念願の花嫁を見つけて、二人が「火星のアダムとイブ」となって新しい道を切り開いてほしかった。最後に出てきたティモシイの一家もいいけれど、彼らはすでに「家族」だし。それより独り身のウォルター・グリップが伴侶を見つけ、幸せになってほしかったな。

他に印象的なお話は、「地球の人々」「第三探検隊」「夜の邂逅」「火の玉」「火星の人」「長の年月」そして「優しく雨ぞ降りしきる」。
とりわけ「第三探検隊」が面白かった。どうも私はこの作家のホラー寄りの作品が好きらしい。
それにしてもこの作家は本当に作風が幅広い。オムニバス短編集の中に、ありとあらゆるジャンルの作品がつまっている。上記のようなホラー系もあれば、「沈黙の町」のようなコメディ系もある。他にもラブストーリーあり、銃で撃ち合うアクションものあり、キリスト教ベースのスピリチュアルものありと、実にバラエティ豊かだ。一歩間違えると散漫な印象にもなりかねないが、ぎりぎりのところで「一つの連続した物語」としてまとまっているのは、やはり独特の叙情あふれる文章のゆえだろう。作品ジャンルはバラバラでも、どの作品にもなんともいえない詩情が漂っているから、一連の物語として成り立っているし、読者は作品ジャンルの雑多さなど気にならず、どっぷりとその世界にひたることができる。
まあそうは言っても個人的に「第二のアッシャ−邸」だけは、この一連の物語から「浮いている感」がぬぐえなかった。それはこの作品だけは、火星が舞台である必要性をあまり感じなかったからだろうか。


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12.3
西さん

たぶん全世界が「メッシ?」と突っ込んだことでしょう(笑)。
推測ですが、バラックの末っ子が以前、バルセロナのユニフォームを着てたんですよね。なのでバルサファン(そしてメッシファン)の息子への、家庭サービスの一面もあるのかなあと思ったり。
それにバラック本人もああ見えてけっこうミーハーなとこがあるので、単純に当代きってのスーパースターを呼びたいっていうのもあるんだろうなと。それによって試合の主役が自分ではなくメッシになっちゃうんじゃないかってことは、たぶん気にしてない(笑)。
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