何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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殉職した教師に捧げる「サウンド・オブ・サイレンス」
 

ポール・サイモンサイトの掲示板で、沼崎マコトさんから教えていただいたニュース。昨年12月14日にアメリカ・コネチカット州の小学校で起こった銃乱射事件。生徒らを守るために銃の前に立ちはだかり、銃弾に倒れたヴィクトリア・ソートー先生の葬儀にポール・サイモンが出席。ギター1本で「サウンド・オブ・サイレンス」を歌い上げた。
記事によると、ポールが登場した際に特に紹介などはなく、歌い終わった後も、会場から拍手はなくただ静けさが場内を包んだという。

元記事
http://nmn.nifty.com/cs/catalog/nmn_topics/catalog_121221087905_1.htm

紹介のアナウンスもなく壇上に上がり、弾き語りで「サウンド・オブ・サイレンス」を演奏した後、シーンと静まり返る中を、自分の席へと戻るポール・サイモン。
記事を読んで浮かぶのは、なんとももの哀しい情景だ。だがそういった哀しいシーンに、ポールという人は実にすんなりとけ込むのだ。
一般人の葬儀に有名ミュージシャンが出演。だがそこには華やかな歓声も、拍手もない。そもそも、ポールには「出演」という意識すらないだろう。彼はミュージシャンとしてではなく、「遺族の友人」として葬儀に出席した。記事によるとポールは、彼の義理の妹を通じて遺族のソートー家と付き合いがあったらしい。
だからたぶん、登場時の紹介などは、ポールの方から断ったのではないだろうか。自分は友人として葬儀に出席するのだから、アナウンスはいらないと。そして他の出席者たちが黙祷を捧げる代わりに、彼は歌を捧げた。捧げた歌は「サウンド・オブ・サイレンス」。
「やあ暗闇、僕の古い友達。また君と話にやって来た」というフレーズで始まるこの歌は、「現代人の孤独」「都会人のコミュニケーションの欠如」を歌っていると言われている。今、改めて歌詞を読み、そしてあの銃乱射事件の犠牲者の葬儀で歌われたのだと思うと、どきっとするほどその歌詞の内容がリアルに感じられる。というのも、事件の犠牲者に捧げた歌だったにもかかわらず、その歌詞は犠牲者よりも、彼女を殺した犯人の心情に、より近いように思えたからだ。
とりわけ、下記のフレーズが生々しい。

Hear my words that I might teach you
Take my arms that I might reach you


僕の言うことを聞いてくれ
僕の差し出した腕をつかんでくれ


だが歌の中では、彼の言うことを聞いてくれる者は誰もいない。
ポールが歌い終わった後に拍手がなかったのも、もしかしたら出席者たちはこの歌から「現代人の孤独」を突きつけられ、その孤独から生まれた「心の闇」が、このような事件を起こしたのではないかと考えさせられたからではないだろうか。
とはいっても、私はたとえこの事件の犯人が深い孤独や「心の闇」なんかを抱えていたとしても、犯人に共感や同情の気持ちなどはわかないのだが。ただ、ポールが犠牲者の葬儀で、数ある歌の中からあえて「サウンド・オブ・サイレンス」を選んだというその事実。なぜ、この歌なのか。たとえば、生徒をかばって銃弾に倒れた教師の自己犠牲の精神をたたえるなら、「自分を犠牲にしてでも愛する人を守りたい」と歌う「明日に架ける橋」なども、ふさわしかったように思うのだが。

だがポールがこういった場で「サウンド・オブ・サイレンス」を歌うのは、実はこれが初めてではない。
米同時多発テロから10年後の2011年9月11日にニューヨークで行われた「9・11追悼式典」で、ポールは当初「明日に架ける橋」を歌う予定だった。だが当日になって急きょ曲目を変更し、「サウンド・オブ・サイレンス」をギター1本で静かに歌いあげた。彼が歌い終えると、「遺族たちは『この曲が一番よかった』とつぶやいた」と、当時の朝日新聞の記事は伝えている。
「なぜ、曲目を変えたのかは推測するしかない。米国型民主主義を世界中に押し付けるあまり、『対話』をおろそかにしてしまったのではないか。サイモンからのそんな問いかけではないかと思えて仕方がないのだ」(2011.9.21朝日新聞より)

今回の銃乱射事件。犠牲者の葬儀でポールが「サウンド・オブ・サイレンス」を歌ったのも、同じような理由からだろうか。
確かに事件は痛ましい。だが、ただ犠牲者に涙し、また犯人を憎むだけでなく、「なぜこのような事件が起こったのか」その原因を考えることが必要じゃないだろうか。そんな問いかけが秘められていたのかもしれない。

それにしても発表から50年近くたっても、今もなおリアリティをもって心に迫ってくる、この「サウンド・オブ・サイレンス」の歌詞の普遍性には驚かされる。
一般的には「サウンド・オブ・サイレンス」というと、真っ先に思い浮かぶのはサイモン&ガーファンクルのバージョンだろう。二人の美しいハーモニーとポールのギター、それにエレクトリック・ギター、ベース、ドラムなどが加わったフォーク・ロック調の軽快なリズム。
だがポールファンならご存知のように、元々はポールがギター1本で歌い上げる、彼のソロナンバーだ。そしてポールがソロで演奏する「サウンド・オブ・サイレンス」は、サイモン&ガーファンクルが歌うそれよりも、演奏と歌声がシンプルな分、よりダイレクトに歌詞の内容が心に響いてくるように思う。
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