何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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リピーターの多いホスピス病院〈2〉
■ステンドグラスの光に迎えられて

ホスピスの起源は古い。どれくらい古いかについては諸説あって、およそ2000年前のローマ帝国の時代(新約聖書が書かれた時代)という説もあれば、11世紀の十字軍の時代だという説もある。
「時代」だけでなく「場所」についても様々で、教会という説もあれば、修道院という説、また聖地巡礼の巡礼者を泊める宿泊所という説もある。共通しているのは、疲れ、傷ついた旅人をもてなし、癒すための場所がその起源だということ。金持ちであろうと貧しい人であろうと関係なく、傷ついた旅人を誰でも受け入れ、食べ物と宿を与えてもてなした。怪我や病気をしていた場合には手当てをし、治らない場合にはその死をもやさしく看取ったという。これがホスピスの起源であり、その根本には「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(聖書・マタイによる福音書25章40節 )というキリストの言葉がある。
日本のホスピスの先駆けとなった淀川キリスト教病院も、このキリストの言葉を「病院の理念」としてかかげ、ホスピス医療に力を注いできた。その淀キリが、2012年11月1日、日本初のこどもホスピスを開設。「やはり淀キリが最初につくってくれた」という感謝と、「でも、それまでと全く違う病院に転院することは、果たして子どもにとって幸せなのだろうか」という疑問。それらがないまぜになったまま、見学当日を迎えた。

前述したように「ホスピス=死を待つ場所」のイメージが強い私は、院内に入るにはきちんとした格好でなければと思い、センタープレスのパンツに襟付きシャツをインするという、「仕事でもそんな格好しないだろ」というカッチリした服装で赴いた。また、厳かな場所なので撮影禁止だろうと思い、カメラも持っていかなかった。(記事中の写真は、一緒に見学した方から送っていただいたもの+照明塾から許可をもらってお借りしたものである)
だが院内に入ってすぐに、それはイメージ違いだったということに気づく。
もちろん、ホスピスが厳かな場所であるということに間違いはない。そこを見学させてもらうのだから、それなりにきちんとした服装をしていくのは礼儀だろう。 ましてや、日本初の子どもホスピスである。まだ幼い子どもが親よりも先に死んでいくことより辛いことが、この世にあるだろうか。だがそれは、「ホスピス=死を待つ場所」という固定観念にとらわれすぎていたことが、実際に見学してみて分かった。

まず、院内の雰囲気が病院らしくない。玄関から入った私たちを真っ先に迎えてくれたのは、ステンドグラスのあたたかな光。玄関の右手にある、こじんまりとしたチャペルからの光だった。
チャペルの礼拝には病院職員や患者家族らが出席。牧師は淀キリの母体であるキリスト教団体「ジャパンミッション」からつかわされていると、案内役のスタッフが教えてくれた。
礼拝がいつ行われているかは聞きそびれたが、恐らく毎朝、行われているのでは。一日の始めにまず礼拝で祈ってから、職員は仕事につくのではないだろうか。チャペルの椅子には、新共同訳聖書と賛美歌が収められていた。
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チャペルのステンドグラス

■まるでホテル。緊急事態の対策も万全

「ホスピス・こどもホスピス病院」なので、四階は大人のホスピス病棟、二階は子どものホスピス病棟に分けられている。始めに見学したのは大人のホスピス病棟だったが、エレベーターから降りてびっくり。ゆったりと広い廊下、木を基調にしたシックな内装、暖色系の光で院内をあたたかく包むダウンライトなど、どれを取っても上質なホテルのよう。全て個室となる病室も、それぞれゆったりとした広さがあり、車椅子に乗ったまま、またベッドに寝たまま出入りできる。中でも感心したのはトイレと浴室。もし中に入っている時に具合が悪くなって倒れた場合、他の人が中に入って助けたくても、中から鍵がかかっていたら入れない。そんな緊急事態には、扉の上のスイッチをボールペンのようなもので押すと、鍵がかかっていても扉ごと外すことができるのだ。
またトイレには、疲れた時には前にもたれかかることができるよう、手動で操作できるシートも設置されている。
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大人のホスピス病棟のロビー。奥にはキッチンと冷蔵庫があり、宿泊者が自由に利用できる。見学したのが三月なので、お雛様が飾られていた。

■空と電車と飛行機をひとりじめ

五階に上がると、さらに大きな感動が待っていた。最上階となるこの階は「宙(そら)」と名付けられており、スカイガーデンとカフェラウンジが設けられている。カフェを通ってスカイガーデンに出たとたん、見学チームから歓声が上がった。青空の下にウッドデッキが敷かれ、周りにはたくさんの花と緑。そしてすぐ下には阪急電車の線路と、満開の桜並木。なんて気持ちのいい空間だろう!
さらに、上空を伊丹空港へと行き来する飛行機が飛んでいる。「電車と飛行機、両方見ることができるから子どもさんに好評なんですよ」とスタッフ。確かにこれは楽しい。以前は単なるコンクリートの床の「屋上」だった部分を作り替えたこのスカイガーデン、「ガーデン」というだけあって、床にウッドデッキを敷き、花壇を作って「おうちの庭」を再現している。
外でお茶や軽食が楽しめるよう、テーブルと椅子も配置。ごろんと寝転べるベッドもある。強風を遮りつつ、景観を邪魔しない強化ガラスで周囲をおおっているので、ちょっと風が強い日も安心だ。隣接しているカフェで出されるお茶をここで楽しむこともできるし、外から食事を持ち込むこともできる(はず)。
今、花壇に植わっている花はボランティアが植えたそうだけど、ゆくゆくは患者が花や木を植えて、その成長を楽しめるようになるといいな。なんせ去年11月にオープンしたばかりの施設、これから新たに始まっていくことも多いだろう。

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スカイガーデンに設置されているホスピスのシンボルマーク。牧師や医師、看護師たちが患者をしっかり支えている。

〈3〉に続く
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