何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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午前5時の朝帰り
タイトルに反して、ちっとも色っぽい話ではない(笑)。朝帰りといっても「でぇと」とかじゃなく、ただ単に仕事で終電逃しただけ。でも自分としては「日常の中の非日常」って感じで、なかなか楽しかったのだ。
そして今回の終電逃しから学んだこと。

加古川は大阪から遠い。

「何を今さら」って感じだけど、加古川って兵庫ですやん。兵庫は大阪の隣ですやん。だがここで私は重大な見落としをしていた。兵庫県は「横に長い」のだ。なので同じ兵庫県内といっても、神戸から大阪に帰るのと、加古川から大阪に帰るのとでは距離から移動時間からまったく違う。ふだん車を運転しないせいか、私はあんまり地図を見ない。見ても、そこから距離や移動時間を読み取る能力がない。
そして、さらに重大な見落とし。私の家は一応大阪府内とはいえ、「位置的には和歌山に近い」ということ。つまり大阪のはしっこ。そりゃあ横に長い兵庫県の端の方から、大阪の端に帰るのは時間かかりますわな。
それら二つの見落としと、「まさか終電を逃すわけない」という危機感の無さが重なって、先日、まさかの終電逃しが発生したのだった。

繰り返すが、加古川に行ったのは仕事のため。いくら夜までかかる仕事とはいえ、まさか終電逃す時間までかかると思わなかったから、仕事先に時間通りにつくための「行き」の電車ルートは調べても、加古川を何時に出ればいいのかという「帰り」のルートは調べてなかった。だから仕事先で22時半になろうとも、「やばい。早く帰らないと終電逃す」という焦りが全くなかった。
それまでの感覚として、「23時を過ぎたらちょっと焦るけど、22時台ならぜんぜん大丈夫」という自分なりの「終電感」があったのもある。たとえば大阪駅を11時半頃に出れば、ぎりぎり最寄り駅までの最終便には間に合うだろう、という感覚。だがあいにくその日、私は大阪ではなく加古川にいた。そのことをきれいさっぱり忘れていたのだからアホだ。

そんなアホな私を見かねたのか、「そろそろ帰らないと終電やばいんじゃないですか?」と声をかけてくれたのは取材先のお家の方。それでようやく取材を終えることに。その方は私を加古川駅まで車で送ってくれたんだけど、その車中でも終電に間に合うかどうかなんて全く気にしてなかった私。能天気にもほどがある。

ようやくやばいと気づいたのは、23時前に加古川駅について、大阪行きの快速列車を待ちながら、ケータイで家までの乗り換えルートを調べたとき。天王寺駅まではなんとか今夜中(24時半)にたどりつけるものの、そこから家の最寄り駅までの電車がもうない。つまり終電に間に合わなかったのだ。
しかしこの時になってもまだ、私には妙な余裕があった。確かに終電は逃したけど、ここは日本だし、なんとかなるさという余裕。こういう時に海外を一人旅してきた経験が生きてくるのだ。って、自慢げに言うことじゃ全くない!(汗)
だがこうなった以上、今さらジタバタしても仕方ないのも事実。ちゃんと終電の時間を調べておかなかったことを反省したら、次は「これからどうするか」を落ちついて考える。まず「ホテルに泊まる」は、なるだけお金を使いたくないのでナシ。とはいえ一番安上がりの「友達の家に泊めてもらう」も、この時間だと大阪に着くのは24時過ぎるだろうし、さすがに迷惑だからナシ。24時間営業のファミレスとかでフリードリンク飲みながら始発まで過ごす、というのも若い頃なら実践しただろうけど、体力的に無理できないトシになった今はナシ。やっぱり少しでも寝たいし。ちょっとくらい窮屈な場所でもいいから。となると、残る手段はただ一つ。ネカフェに泊まる。

ネカフェを利用したことは今までにもあるけど、「泊まる」なんて経験は初めてで、そうなるとちょっとワクワクしてきた。さっそく、大阪に向かう車中で、天王寺駅周辺のネカフェをケータイで検索。

天王寺駅に着いたのは24時30分頃。改札では駅員さんが「次の電車が鳳行きの最終となります」と声を張り上げていた。その風景が、いかにも「最終直前」の駅の雰囲気でなんだか新鮮。しかし私は鳳駅よりもっと先の駅で降りるので、そしてその駅行きの電車はもうないので、駅を出て繁華街の方へ。繁華街といっても、さすがにこの時間になるとほとんどの店が閉まっており、行き交う人もまばら。誰も立ち止まる人のない暗い道路脇で、4人くらいのバンドがジャズを演奏しており、その音色が妙に哀愁を帯びて深夜の街に響いていた。

私が向かったのは駅から徒歩1分の大通り沿いにあるネカフェ。場所は雑居ビルの4階だけど、1階がコンビニなのですぐ見つけられた。というかそのビルの前で、「ナイトパック980円〜」という大きな看板を店員さんがかかげて宣伝していた。終電がなくなった後のこの時間帯だからこそ、そうやってわざわざ店員さんが出てきて道行く人にアピールしているのだろう。

ナイトパック980円ってやす〜と思いながらエレベーターで4階に上がる。だがそれは個室ではないオープンな席の値段で、個室だと5時間1560円だった。それでもホテルに泊まるよりはずっと安い。私が撰んだのはリクライニングチェアがある個室。受付をすまし、自分のルームスペースへ。

ガラスの引き戸を開けると、暗闇の中に机とパソコン、そしてリクライニングチェアが浮かび上がった。ここには寝るために来たはずなのに、この組み合わせを見るととりあえずパソコンの電源を入れてしまう私は、やっぱりパソコン好きなんだと実感。10分ほどネットサーフィンをしてから電源を切り、フリードリンクをもらおうと部屋を出た。

フリードリンクスペースに行く途中、リュックを持った初老の女性とすれ違った。年は50〜60台くらいだろうか。服装からして、仕事で遅くなって終電逃して、仕方なく……という風ではない。もしかしてネカフェ難民?と思ったけど、そういう私だって他者から見たら「いい年した女性がこんなところに泊まるなんて」と思われてるだろうし、それ以上詮索するのはやめにした。

部屋に戻り、ケータイのアラームを5時15分に合わせる。翌朝の始発が5時35分だったからだ。
それからそのケータイを机の上に置き、リクライニングチェアを倒して目を閉じる。疲れていたし、眠かったけど、このまますんなり眠れないだろうなと心のどこかで感じている。理由はいろいろあって、まずはそのいち。冷房がきつい。
普段でも夜、いくら暑くても寝るときに冷房をつけない私は、冷房がガンガンに効いたネカフェ内は寒すぎた。この問題は、受付で毛布を無料レンタルしていることに気づいて解決した。借りてきた毛布にくるまって再度、寝る体勢に入る。しかしここで再び問題発生。近くの男性のいびきがうるさい
それでもこのまま目を閉じていれば、しばらくしたら眠れるだろうと我慢していた。だがようやくうとうとしかけたとき、ボリュームを増したいびきに起こされた。いびきの音量やリズムが一定ではないのだ。これはきつい。
だがこのとき、さっそうと救世主が登場! ……いや正確には、救世主を「思い出した」というべきか。
騒音が苦手な私は、かばんに「耳せん」を忍ばせていることが多い。「常備している」と言えるほど常に持ち歩いてるわけじゃなく、かばんを変えたときには入れ忘れることも多いんだけど、この日はラッキーなことにかばんに忍ばせていた。そのことを思い出し、さっそくその耳せんをかばんから取り出して両耳に装備する。効果はてきめん。それから10分もしないうちに深い眠りについていた。

それから約4時間後、携帯のアラーム音に起こされて目を開けた。当然眠いが、フリードリンクのアイスコーヒーを飲んで無理やり目をさまし、受付で会計をすませてネカフェを出る。もう外はすっかり明るくなっていた。そして早朝の空気が清々しい……と書きたいところだが、やはり郊外にある自分の家の周りで吸う朝の空気と、都会である天王寺の朝の空気はちがっていた。ターミナル駅だけあって、始発に乗るために駅に向かう人がチラホラいるが、私も含めてみなどことなく疲れた顔をしている。その疲れた雰囲気が街の空気にも伝染していた。

駅につくと、関空行きの始発電車(急行)には意外にも多くの人が乗り込んでいた。私は運良く座れたけれど、私の後に乗車してきた人は、座れずに立っている人が多かった。
乗客の顔ぶれも、それまでの始発列車のイメージとはだいぶ異なっていた。それまで、始発列車の乗客といえば「終電を逃して、始発を待っていた人」または「夜の仕事を終えて帰る人」というイメージで、実際、何年か前に乗ったときはそういう人が多く、車内には独特の疲れた雰囲気が漂っていた。
この日の車内にはそういう人たちもいたけれど、それより目立ったのは旅行用の大きなスーツケースを引きずっている人。これはもちろん、この電車が「関空行きの急行の始発」というのが大きい。さらに、PeachなどのLCCの存在も理由の一つだろう。LCCには朝7時発の便などもあるので、そういう便に乗るためには、天王寺を5時半に出なければならないのだろう。
私が何年か前に天王寺発の始発に乗ったときは、まだ関空ではLCCの運行が今ほど多くなかった。だからこれから空港に向かう旅行客もそんなに見なかったんだけど、この日の車内は、半分以上がそういった人たちで、彼らは車内でもずっと楽しそうに、同行者とこれからの旅行について話していた。かっての、始発列車の乗客のイメージ……「疲れた顔で、ぐったりと椅子に体を沈めてうとうとしている」という光景とは、明らかに様変わりしていた。

そんな風に、「時代の流れ」みたいなものを乗客の顔ぶれから感じているうちに、電車が最寄り駅に着いた。生まれて初めてネカフェに泊まるという、“プチ”非日常体験はこうして終わった。別に経験しなくてもいいことだけど、といって一度くらい経験しても決して損にはならない、そんな経験。とりあえず終電逃したときにも、1560円で泊まれる場所があると覚えたことは、今後何かと心強いかもしれない。
初めてのネカフェ泊はなかなか楽しかったけど、かといって再び同じ経験をしたいとは思わない、というのが正直な感想。やっぱり夜は布団の上で寝るのがいちばんですよ。
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