何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
<< July 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< Last winner〈第一部〉「最後の勝者」 | main | Last winner〈第二部〜その2〉「外国人はだいたい友達」※HIPHOPのリズムで >>
Last winner〈第二部〜その1〉 「ジェットコースターの終着点」

ライプチヒ大学近くの広場。背景の近代的なガラス張りの建物と、伝統的な彫刻とのコントラストが印象的。


「ライプチヒは素晴らしい場所だ。ザクセン州は僕のルーツで、ここで僕はサッカーのABCを学んだ。これはとても特別な試合なんだ」

ファンの誰もが願っていたバラックの引退試合が実現する。だが「開催地候補はレヴァークーゼン、カイザースラウテルン、ライプチヒの三カ所」と報道されたとき、最後のライプチヒだけは意外に思った。バラックはライプチヒのクラブに所属したことは一度もない。引退試合といえば、もっとも縁の深いクラブのスタジアムで行うのが一般的だ。だから恐らくレヴァークーゼンで引退試合をするだろうと予測していたし、現地のレヴァークーゼンファンもそう確信していたようだった。
だから開催地がライプチヒに決まったときには驚いたが、冒頭に引用したバラックの発言を読んで初めて「そうか」と納得した。
「ザクセン州は僕のルーツ」ーーつまりライプチヒはバラックのルーツである「ザクセン州」の代表として、開催地に選ばれたのだ。彼がライプチヒのクラブ出身ではないとか、そんなことは、彼がザクセン州ーーもっと端的に言えば「旧東ドイツ出身」ということの前では本当に些細な、実にどうでもよいことなのだった。
私はそれに気づくとともに、バラックの「旧東ドイツ出身」というプロフィールの重みにも、改めて気づかされた。「これは特別な試合」という彼の言葉は、旧東ドイツで引退試合をすること、それ自体が特別なことなのだと言っているようにも受け取れた。

それに、過去の所属クラブとは全く関係がないライプチヒが選ばれたところに、バラックという選手のユニークなキャリアが反映されているようにも思う。バラックは一つのクラブに長くとどまらず、3、4年ごとに移籍を繰り返すことで飛躍的なキャリアアップを果たした選手だ。つまり「バラックといえばこのクラブ」と誰もが認めるようなクラブがない。先に挙げたレヴァークーゼンだって、世界的にブレイクしたときの所属クラブであり、6年ともっとも長く在籍し、また現役最後のクラブになったから、今でもファンに絶大な人気があるから……などの理由から「縁が深い」と書いたに過ぎない。純粋に選手としての全盛期を過ごしたのはバイエルン時代だという意見も多く、その一方で「いや、チェルシー時代こそバラックの全盛期」という声もあるなど、人によって意見は様々で、そのどれもが正しく思え、決めきれない。
だからだろう、マスコミもバラックの引退を報じる記事では、どの新聞もクラブユニを着た写真を使わず、代表ユニを着た写真を使っていた。それが一番無難だからだ。良いように解釈すると、バラックは一つのクラブのイメージにおさまりきらないワールドワイドな選手で、だがそのルーツは旧東ドイツにあった。これもまたバラックのキャリアのドラマチックなところで、東ドイツの典型的な集合住宅に生まれながら、ベルリンの壁崩壊を経て西側のクラブに移籍し、やがてバイエルンFCに、さらにはドイツを飛び出してチェルシーFCにと、そのキャリアは並外れた上昇カーブを描いた。あるメディアはそれを「ジェットコースターキャリア」と書いたが、そうして頂上にぐんぐん上っている時も、彼はケムニッツァーFCに資金援助を続けるなど、コースターの「スタート地点」のことは決して忘れなかった。だからこそ、コースターの終着地に、故郷に近いライプチヒを選んだのだ。また、ケムニッツァーFCでチームメイトだったIngo Hertzsch(アナウンサーはヘルツェと発音)も、バラック&フレンズチームの一員として出場選手に名を連ねていた。

また個人的なことになるが、私にとっても、開催地がレヴァークーゼンではなくライプチヒになったことで、ドイツ旅行三度目にして、初めて旧東ドイツ地域に行く機会ができた。せっかくだから引退試合だけでなく、街の観光もたっぷりしたい。ついでにお隣のポーランドにも足を伸ばしたい。そう考えて計画を練ったら、九日間で三都市を移動する忙しいスケジュールになった。旅行全体については別の記事で書くとして、ここでは引退試合の日に絞って書いていこうと思う。

〈2〉に続く
Last winner〈第一部〉はこちら

DSC_7113.jpg
ライプチヒといえばバッハ。でもこのトーマス教会前の銅像よりも、教会内のステンドグラスの肖像画の方が有名かも。
web拍手 by FC2
スポンサーサイト
web拍手 by FC2
COMMENT









Trackback URL
http://still-crazy.jugem.jp/trackback/282
TRACKBACK