何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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神様がくれた時間「第一章・エル」
「スタジアムに到着するまでに今年が終わりそう」と書いてから約一ヶ月が過ぎ、もう新年も11日め。この間ブログを書けなかったのには理由(言い訳)がある。7年間ともに暮らしたうさぎのグレが、クリスマスイブに突然体調を崩し、歩けなくなってしまったのだ。それから約二週間、年末年始で仕事が休みだったことも幸いして、私は一日中グレの介護につきっきりだった。

介護生活はしばらく続くと思われたが、いや、私としてはもっと続いてほしかったが、1月8日、あっけなく介護生活にピリオドが打たれた。だから今、私はこれを書いている。グレとの楽しい思い出を、そして最後の日々を、まだ記憶が新鮮なうちに残しておくために。
いや、私に楽しい思い出を残してくれた動物はグレだけではない。この機会に、これまでともに暮らした動物たちのことも書いておきたいと思う。

これはエル(雑種犬・♂)の物語である。

小学校の帰り道、垂れ耳が特徴の野良の子犬を拾い、家に連れ帰った。これが、私が初めてともに暮らした動物で、名前をエルと名付けた。
他の犬とじゃれあいの喧嘩をしても決して仰向けになってお腹を見せない(降参しない)のを見て、相手の犬の飼い主が「これはいい犬だ」と感心していた、自慢の犬だった。(ここで「自慢の子」と書かないところが私である。ともに暮らした犬もうさぎも溺愛しているけれど、だからといって「ウチの子」と言ったり、「エルくんのママ」とか呼ばれるのには違和感がある)
エルは完全に外飼いの犬で、玄関横の駐車場に犬小屋をつくり、そこで飼っていた。私が家や学校で辛いことがあり玄関前に一人座って落ち込んでいたとき、エルはそっと隣にやってきては、そのままいつまでも静かに座っていてくれた。私は隣のエルの頭をなでながら、辛いことがみるみる癒されていくのを感じた。
こう書くと、私とエルの間に強い絆があったように感じられるかもしれない。だが私は決していい飼い主ではなかった。エサなどは毎日きちんとあげていたけれど、学校から帰ってからの散歩は面倒で、いやいや散歩に行っていたように思う。かわりに、父がよくエルを散歩に連れ出していた。だからエルは父によく懐いていた。私はまだ子どもだったこともあるが、自分の都合のいいときだけかわいがるような、身勝手な飼い主だった。

エルは元野良犬だったので、正確な誕生日は分からないし、いったい何才まで生きたのかも分からない。でも10年以上は確実に生きたと思う。私がまだ小学生の頃に拾ってきて、やがて成人し、父の転勤のため家族そろって大阪から北海道に引っ越したときも、エルを一緒に連れて行った。大阪では前述したように外飼いしていたが、北海道は寒いので、冬になると「玄関で」飼うようにした。北海道の家は防寒のため玄関が二重ドアになっており、その二重ドアの間に小屋を入れ、そこで飼っていたのだ。


1991年10月15日撮影 北海道にて。

北海道に来た時点でけっこう年を取っていたエルは、数年後には首輪がユルユルになるほど痩せた。足腰も弱り、よろよろとしか歩けなくなった。私はエルがもうこの先長くないと感じ、ことあるごとにエルの頭をなでながら、「神様、この犬が死んだら天国に入れてあげてください」と祈ったことを覚えている。都合のいいときだけかわいがる身勝手な飼い主のくせに、この犬がもうすぐいなくなると思うと、悲しくて仕方なかった。

エルとの別れは唐突だった。その日、エルは玄関ではなく外の小屋にいたから、まだ本格的な冬は訪れていなかったと思う。でもとても寒い日だった。いつものように仕事から帰るとエルがおらず、鎖と首輪だけが小屋の前に残されていた。エルが自分で首輪を外して、どこかに行ってしまった? そんなことが可能なのだろうか。確かに最近やせて、首輪がユルユルになってしまっていたけれど……。
私と妹は懸命に外を歩き回ってエルを探した。やがて雪が降ってきて、白くつもるほどになった。妹が言った。「死ぬのは仕方ないけど、こんな寒い日に、家に帰ろうとヨロヨロさまよい歩いているのはかわいそう」。私も同感だったが、もしかしたらエルはもう、「家に帰ろうと」していないのかもしれない。もともと野良犬だったから、自分の死期を悟り、死に場所を求めて自ら家を離れたのかもしれない。
結局いくら探しても、エルはとうとう見つからず、家にも帰ってこなかった。

そういう訳で、私は最初に飼った動物の死に目に会えず、その亡骸すら見ることができなかった。動物との別れ方にはいろいろあるが、動物が行方不明になって帰ってこない……いわゆる「生き別れ」は、もっとも切ない部類に入るのではないだろうか。
私はエルとの突然の別れを悲しんだが、神様はきっと私の祈りを聞いてくれて、エルを天国に迎えてくれたと信じていたから、いわゆる「ペットロス」にはならなかった。だが自分はいい飼い主ではないという自覚があったので、その後、犬はもちろん、また動物を飼おうという気にはならなかった。

続く
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