何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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大塚国際美術館に行ってきた。
 仕事で徳島市に行ったついでに、ちょっと足を伸ばして、鳴門市にある大塚国際美術館に行ってきました。行く前は「コピー絵を見てもな〜」と、正直あんまり期待してなかったんだけど、予想以上に楽しめました。
私の好きなドラクロワの絵が5枚も展示されていたことも、予想以上で嬉しかった。この美術館に展示されるということは、「西洋を代表する名画」として選ばれたということだから。それも5枚も。

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ドラクロワといえばなんといっても上の「民衆を導く自由の女神」が有名だけど、でもその絵の知名度の割に、それを描いた画家の名前は日本ではほとんど知られていないという……(似たような例に「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠」の画家ダヴィッドがいる)。私が「ドラクロワが好き」と言っても、「誰ソレ」な反応ばかりだったぞ今まで。
本国フランスのルーヴル美術館でも、ドラクロワの絵が展示されている部屋の隣にモナリザが展示されているおかげで、「モナリザの絵の前はいつも黒山の人だかりなのに対し、ドラクロワのコーナーは閑散としている」という話を高校時代に本で読んで以来、私はますますドラクロワびいきになったという思い出が。

でも! この大塚国際美術館では、そのモナリザがある部屋と、ドラクロワの絵がある部屋は遠く離れている!これは嬉しい。やっぱり「民衆を導く自由の女神」は有名で、若い大学生風の女子も「あ、私これ知ってる!」と嬉しそうに、絵の前で記念撮影していました。初老の女性も「あ、これ教科書で見た」と、じっくりその絵を鑑賞してました。まあ、それ以外のドラクロワの絵(「アルジェの女たち」とか)はみんなほぼ素通りだったわけですが。
でもこれは何もドラクロワの絵に限った話ではなく、ごく一部の「誰もが知ってる名画」以外は、ちらっと見ただけで素通りする人が多かった。特に若い人に。よく見たパターンとしては、「有名な絵」はとりあえず写真を撮る(でもその絵の解説を読む人は少ない)。でもその他の「それほど有名ではない絵」はちらっと見ただけで素通り、という人が多くて、「名画のありがたみ」というのが普通の美術館より薄いな〜、と。やっぱり銅板画だからなのか。
「とりあえず写真を撮る」というのも、「写真撮影OK」なこの美術館ならでは、なんだろうけど。撮影OKなぶん、ごく一部の「誰もが知ってる有名な名画」と、そうではない名画の「差」が、普通の美術館よりもくっきりと浮き出ている気がした。つまり同じ名画でも明確にランク分けがされている。
で、さらにその「誰もが知ってる有名な名画」の中にもランクがあって、ただ写真を撮るだけじゃなく、「自分もその絵と一緒に撮影される」絵と、そうでない絵に分かれる。たとえばムンクの「叫び」の前では、若い女性グループが絵の前で入れ替わり立ち替わりして、自分も両頬を押さえて口を開ける「叫び」のポーズをとり、それを友達が笑いながら撮っていた。たぶん後でフェイスブックなどのSNSにupするんだろうけれど、今の時代では名画もそんな風に「自分アピール」の手段に使われるのか……と実感。でもそうやって時代とともに「消費のされ方」が変わっていくからこそ名画、という気もする。そうやって「自分アピール」の手段に使われながらも生き残っていくのが名画なんだろうなあ、と。

批判めいたことはこれくらいにして、素直な感想を行程順に。私は徳島駅から徳島バスに乗って行ったんだけど、平日だからか、朝9時発の「鳴門公園行き」バスは意外と空いていた。
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バスに揺られて約70分、目的地の「大塚国際美術館前」で降りたお客は私含めて7、8人ほど。
私は前日に前売り券を買っていたので、それを見せて入館。入ってすぐの場所にミュージアムショップがあり、そこで携帯式音声ガイドを借りたんだけど、レンタル代が500円なことにまず驚く(笑)。

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システィーナ礼拝堂を模したシスティーナ・ホール。私はこのミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の絵だけを集めた画集を持っていて、でもここ10年くらい読み返していなかった。なのでどこか懐かしい気持ちで天井を見上げた。

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神がアダムに「命」をさずける場面。互いの指先が今にも触れ合おうとしている、この緊張感が好き。
でもいつも思うけど、ミケランジェロの描く裸体って色気がない。だからこんな大空間の天井にぎっしり裸体を描いても「いやらしさ」がないんだろうけど。むしろ神々しい。

平日だからか、館内のお客は大学生風の若者や、定年後のシニア層、また子育てを終えた主婦のような人たちが多かった。
館内ガイドツアーに参加してるのはだいたいおじさんおばさんたち。若い人は先にも書いたように、有名な絵を見つけるとカシャッと撮って、そうじゃない絵はちらっと見ただけで素通り、とマイペースで鑑賞してる人が多かった。
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システィーナ・ホールでガイドのお姉さんの解説を聞く皆さんも、年配の人が多い。中にはガイドの方を見ずに、天井画を見上げている人も。



私にとってはシスティーナ・ホールよりも印象的だった、スクロヴェーニ礼拝堂。こういう中世のキリスト教絵画って、普通の美術館の展示方法だとあんまりその良さが伝わらなくてつい流し見しがちなんだけど、ここではこんな風にその絵が描かれている空間ごと再現してくれてるから、ひきこまれるような臨場感がある。

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古代壁画も、中世のキリスト教絵画と同じように、普通の展示方法だとつい流し見しがちなジャンルの一つ。でもこんな風に壁画のある洞窟ごと、また聖堂ごと再現した環境展示だと迫力がちがう。あえて照明を落としてある洞窟や聖堂の中に入ると、なんとも厳かな気分に。当時の人々の素朴な信仰心が伝わってくるようだった。
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こんな風に、壁画の「欠けている部分」まで忠実に再現しているのがすごい。

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幻想的な壁画「貝殻のヴィーナス」。
こういう飾り棚(?)も銅板で再現。
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同じく環境展示の、モネの「大睡蓮」。その絵の周囲には実際に睡蓮の池があるんだけど、この池を囲むテラス席が「持ち込んだ食べ物用の飲食スポット」としてこっそりおすすめ。
美術館の公式サイトに「お弁当は持ち込めますか?」というQがあって、そのアンサーとして「原則としてご遠慮いただいております。館内にレストラン・カフェがございますのでこちらをご利用ください」とある。なのであんまりおおっぴらにお弁当は食べられないけど、おにぎりくらいならこのテラス席のテーブルで食べられると思う。館内レストランのテラス席なんだけど、他のお客はみんな室内席で食べていて、店員もテラスの方には回ってこない。「館内レストランは高い割に味がいまいちだし、そんな時間があれば鑑賞にまわしたいから、ささっとおにぎりを食べる場所がほしい」という人にはおすすめ。あと、なるだけ安く出費を抑えたい人にも(笑)。

それにしてもロンドンやベルリンの美術館で「本物」を見たことのある絵って、やっぱりちゃんと覚えてるんですね。また日本で、銅板画として再会できて嬉しい一方、「やっぱり本物とは違うな」と実感したり。

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イエス以外の人物を全て現代風に置き換えた「マグダラのマリア」。こうした、今まで知らなかった名画にもたくさん出会えた。
他にもダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の修復前と修復後を向かい合わせに展示して、修復後の絵を「これがダ・ヴィンチが描いた本当の最後の晩餐」と解説してたけど、馴染みのある修復前の絵の方がどうにもダ・ヴィンチらしい絵に見えたりとか、いろいろ興味深かった。
そんな楽しくて勉強になる美術館だったけど、ただ一つ悔いが残ったのが、2階にあったテーマ展示「レンブラントの自画像」を見逃したこと。そんな展示があったことすら知らなかった、知ってたら絶対に見逃さないのに!なんたる失態。帰りのバスの中で、改めてパンフレットを見ていた時に、そんな展示があったことに初めて気づいた……。レンブラントの自画像大好きで、ロンドンのナショナル・ギャラリーでその一つを見たときはしばらく絵の前から離れられないほどの衝撃を受けたものだった。

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でもその代わりに、これも大好きなビング・クロスビーを題材にしたポップ・アートに出会えたからいいか。こうしたポップ・アートってウォーホールのマリリン・モンローが有名だけど、クロスビーもその題材になっていたとは知らなかった。

10時過ぎに入館して、美術館を出たのが16時半。まだまだ鑑賞したかったけど、16時43分発のバスが徳島駅行きの最終便だったので、仕方なく美術館を後にした。見逃した「レンブラントの自画像」を見るために、またきっといつか訪れると思う。
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