何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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ベルリン名物・巨大ピザ
5年前にも訪れた、ベルリンのイタリア料理店「12 Aposte(ツヴェルフ・アポステル)」。旅先で出会ったベルリン駐在の日本人に「あの店が美味しい」と教えてもらい、行ってみると、サッカーのサポーターたちで賑わっていた。その日は昼から、ドイツW杯の開幕戦が行われる日だったのだ。イタリア人経営のお店らしく、スタッフの一人がイタリア代表のユニフォームを着ていたっけ。その後、準決勝でドイツがイタリアに負けたときは、「あのお店はフーリガンに襲撃されなかっただろうか」とふと心配になったりしたものだった。(ユーロ2008のドイツ対トルコの際には、ドイツが勝ったにもかかわらず、トルコ料理店がドイツ人に襲撃されたそうだし)

そのときはパスタを頼み、噂通りのおいしさに満足して帰ったのだが、帰国後、実はあの店の名物は「超ビッグサイズのピザ」だと知り、リベンジを決意。「次に行ったら、ぜったいピザ頼むねん!」……さすが私、食べ物にかける執念はスゴイ。
5年ぶりのドイツ旅行となった今回、旅行日程の真ん中にベルリンへの一泊旅行をねじこんだのも、「巨大ピザが食べたい」という理由が大きい(それとバウハウス)。もちろん持ち帰り用のタッパー持参だ。これ一食で、昼も夜もまかなう気満々である。しかも平日11時半~16時までは、全てのピザが6.95ユーロで食べられるとか。これは嬉しい!(特にビンボ人には)

市内にはミッテ店とシャルロッテンブルク店の2店舗がある。ガイドブックで紹介されているのはたいてい、ペルガモン博物館に近いミッテ店だ。だが博物館に用がなければ、「Savignyplatz(サヴィニープラッツ)」駅すぐそばのシャルロッテンブルク店の方が行きやすいのではと思う。(ミッテ店は駅から遠い)
私は前回も、そして今回もシャルロッテンブルク店に行った。というか、シャルロッテンブルク店に歩いていけるホテルに泊まった。どんだけピザ食べたいんだって話ですね(笑)。
だがそんな執念を砕こうとするかのように、ベルリン行きには手間取った。10月21日の10時の便で、ケルン・ボン空港からベルリンへ。のはずだったが、朝起きて、予定通り電車に乗ったらほっとしたのか、ケルン・ボン空港駅を乗り過ごすという大チョンボをやらかした。はっと気づいた時には、すでに空港駅を通り過ぎた後。慌てて次の駅で降りて引き返したが、時すでに遅し。これ、乗り過ごしたのも間抜けだけど、そもそもぎりぎりの時間にホテルを出たのがまずかった。「飛行機の出発2時間前には空港に着くこと」という鉄則通り、もっと余裕を持って空港に着くようにしていたら、乗り過ごしても間に合ったかもしれないのに。
ようやく空港に着いたのが、出発時刻の15分前。もしかしたら間に合うかも!と走ったが、こういう時に限って、目当ての航空会社のカウンターが遠い。ようやくエアベルリンのカウンターに着いた時、すでにベルリン行きの便は飛び立っていた。
仕方なく、次の便を予約する。1万円の余計な出費だ。でも国内線だから1万ですんだものの、もし国際線だったら…と考えると恐ろしい。(国内線だから気がゆるんで乗り遅れた、という気もするけど)
次のベルリン行きの便は一時間半後。チェックインをすませてロビーで待っていたが、出発30分前になっても搭乗手続きが始まらない。ロビーの客がざわつきだした頃、「飛行機の出発が遅れます」のアナウンスが流れた。
ああ、今日のランチは巨大ピザのはずだったのに、ピザが……遠ざかっていく……。
気力が萎えかかっている私の周りで、他の客が次々に立ち上がり、ロビーから去っていく。どうやら、飛行機は1時間近く遅れるらしい。あのとき駅を乗り過ごさなければ、10時の便に乗れていて、今頃ベルリンに到着しているはずだったのに……と自分を責めても仕方ないので、気分転換に自販機でアイスを買って食べた。普段もそうだが、旅行中は特に、いつまでも落ち込んでいたらもったいない。きっちり反省したら、後は忘れる。こうして飛行機に乗り遅れるのも、旅の醍醐味の一つ!……と考えるのはポジティブシンキングすぎるけど、でもせっかく空港でぶらぶらする時間ができたんだから。この時間を楽しもうと思い、見学気分で空港内を歩き回った。私の世代では、ケルン・ボン空港といえば「エロイカより愛をこめて」。少佐もこんな風に、空港で苛々しながら次の便を待ったかもしれない。「任務に間に合わん!」とか独づきながら。そう、私にとって、ベルリンでピザを食べることはまさに任務……などとしょーもないことを考えていたら、搭乗手続きが始まった。よかった、思ったより早かった。そうしてようやく飛行機に乗り、ベルリンへと飛び立った。


ケルン・ボン空港の待合ロビー

テーゲル空港に着いたのは昼の2時過ぎ。そこからバスに乗って、ツォー駅に着いたのが2時半。予定より3時間も遅れてしまい、もうお腹が空きすぎてフラフラする。今なら巨大ピザも平らげられそう。
クーダム通り近くのホテルにチェックインして、サヴィニー広場まで歩く。広場を中心とした界隈は、賑やかなツォー駅やクーダム通りとは違う落ち着いた雰囲気で、人が歩く速度もゆったりしている。(クーダム通りは、みんな早足でシャカシャカ歩いている)
観光スポットや商業施設がある訳ではないので、観光客らしき人の姿も見かけない。地元民がひいきにする名店が多い印象で、「12 Aposte」もその一つ。
5年ぶりの訪問だったが、サヴィニープラッツ駅周辺はほとんど変わっていなかった。Sバーンの線路高架下にある雑貨屋さんもそのままだし、思わず「ただいま」と言いたくなるような懐かしさ。
「12 Aposte」も変わっていなかった。いや、前より繁盛店になってるかもしれない。もう午後3時、ランチタイムは過ぎているのに、店内はお客でいっぱいだった。入口で待っていると、品の良さそうなおじさまウェイターに、二人用の席に案内してもらう。メニューを開いて、頼むのはもちろんピザ。
店名が「12使徒」だけあって、ピザには全て使徒たちの名前がついている。ピザ・ペテロ、ピザ・マタイという風に。省かれがちなピザ・ユダもいた。ピザ・マグダレナもいる。マグダラのマリアは12使徒じゃないけど、女性使徒代表としてメニュー入りだろうか。どれにしようか迷ったけど、午後4時まではどのピザも6.95ユーロなんだから、一番ゴージャスなのを頼んじゃえ〜と、店名がついた「Pizza 12 Apostel」を注文。メニューには「トマト、モッツァレラ、エビ、新鮮な鮭、クリーム、ルッコラ」のトッピングと書いてあった。

10分ほどしてから、注文したピザが運ばれてきた。もうお腹が空きすぎて、ビザ一枚ぺろっと食べられそうと思っていた私だが、実物を見たとたん、

ムリ。半分もムリ。

想像を遥かに超えるその巨大さ。「座布団ピザ」とでも名付けたいほど。「お皿からはみ出そうなほど大きい」という表現は、ボリュームのある料理についての常套句だけど、本当にお皿からはみ出してる料理は初めて見たわ。



だいたい、料理を見た第一印象が「おいしそう〜」ではなく「どうしよう…」だったことからしておかしい。持ち帰り用タッパーを持参してるけど、そのタッパーにも入らないんじゃないだろうか。大食漢の多いドイツ人の間で、「巨大ピザ」と評判になるのも分かる。
とりあえず、時間もないので食べ始める(さっきまでの空腹感はどこかにすっ飛んでいた)。よかった、ちゃんとおいしかった。これで不味かったら泣けてくるし。焼きたてだから、生地がカリッとクリスピーで香ばしい。そして大ぶりのエビと鮭がごろごろ乗っていて、食べ応えありすぎ。メニューには「新鮮な鮭」とあったから生サーモンを予想していたが、乗っているのはどう見ても焼き鮭。ドイツでいう「新鮮」は、「生」って意味ではなかったらしい。
ピザは焼きたてがおいしいから、なるべく店で食べよう。そう思ってひたすらピザを頬張ったが、5分の2ほど食べてギブアップ。ふと隣の席を見ると、初老のドイツ人夫婦もピザを食べていた。ピザはまだ半分以上残っていたが、おじさんがピザを食べるスピードが明らかに遅い。恰幅のいいドイツ人男性でさえ、このピザを食べるのに難儀しているのだから、私が食べきれないのも無理はない。観念して、残りのピザをタッパーに詰めていった。が、量が多くてタッパーに入りきらない。もったいないけど、2切れほど残すことにした。ウェイターを呼び、チップ込みで多めに払う。用意してきたドイツ語会話ノートを指さし「8ユーロ、ビッテ」と言うと、そのたどたどしさが受けたらしく、ウェイターは隣席のドイツ人夫婦と「健気だね」と笑い合ってから、お金を受け取り去っていった。
私も席を立とうとすると、隣席のおじさんが「どこから来たの?」と話しかけてきた。「ヤーパン」と答えてから、三ヶ月前のドイツ女子W杯で日本が優勝したことを思いだし、「フラウフースバル、ヴェーエム、ナデシコ」と適当な単語を並べる。するとおじさんは「スーパー!」と笑顔を見せた。よかった、どうやら通じたみたい。「ナデシコ」のドイツでの浸透っぷりに感謝。
その後もおじさんと「トーキョー?」「ナイン、オーサカ」などと簡単な会話をした後、「ヴィーダァーゼーエン」と言って別れた。ドイツ語が達者だったら、もっと会話が弾んだだろうに……と、もどかしくなるのはこんな時だ。でもまあ、ピザはおいしかったし、任務を達成した充実感に満ち足りて店を出た。

その夜。文化フォーラムの絵画館とポツダム広場を見て回り、くたくたになってホテルに帰った。夕食がピザだけだと胃にもたれるので、スーパーでサラダとヨーグルトも買ってきた。食材の準備が整い、タッパーを開けてピザを食べる。お店ではカリッとしていた生地が、ふにゃふにゃ〜になっていた。どうやらタッパーの中でじっくり湿気をたくわえていたらしい。ちょっとしっとりしすぎで、もはやピザではない。食べきれない料理を持ち帰るのもいいけど、「ピザは焼きたてに限る」と再認識した、ベルリンでの巨大ピザ体験だった。

■関連ページ
「12 Aposte」公式サイト
http://www.12-apostel.de/en/

5年前の「12 Aposte」訪問記
http://still-crazy.cool.ne.jp/deutsch/brandenburger.html
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