何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
<< July 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< レンタル在庫に見る、ポールとS&Gの「格差」。 | main | ベンジャミン・バトン >>
シャワーのお湯が止まらない!〜洋館ホテルの理想と現実
ドイツを旅していて楽しいのは、古い建物がたくさん残っていること。日本だったら「レトロな洋館」として観光スポットになりそうな建物があちこちにある。そうした古い洋館は、外から見ているぶんには楽しいが、実際に住むとなるといろいろ不便なことも多い。それらをほんのひととき体験できるのが、Hotel Pension(ホテル・ペンジオン)だと思う。ベルリンなどの都市部では、建物のワンフロアを客室として貸し出しているのが一般的。普通のホテルに比べて設備は簡素だが、そのぶん料金は安い。

私は前回の旅行でベルリンに一泊した際に、このホテル・ペンジオンを初めて利用した。ホテルを予約せずにベルリンに行き、ベルリン中央駅のインフォメーションで「今晩泊まれるホテル」を探してもらったら、勧められたのが「Hotel Pension WAIZENEGGER」。そんな機会がなかったら、おそらくこの手のホテルに泊まることはなかったと思う。「Hotel Pension」の名を見たときも、日本のリゾート地にあるような一軒家のペンションを想像して、「ベルリンにペンションがあるの?」と驚いたくらいだ。ベルリンといっても広いし、郊外の不便な場所にあるのでは……と思ったが、場所はツォー駅のすぐ近く。それでいて、一泊40ユーロという破格の値段。……あやしい。もしかして、すごく治安が悪いのではとも思ったが、「インフォメーションのスタッフが勧めているんだし」と信頼し、そのホテル・ペンジオンを予約した。

地図を頼りにたどりつけば、そこは中庭のある、大きな古い洋館だった。その建物のワンフロアを、ホテル・ペンジオンとして旅行者に提供しているらしい。他の階はマンションとして使われているようで、中から住人が門を開けて出てこようとしていた。
こんなレトロな洋館に泊まれるなんて。予約したときの不安感はどこへやら、私はひと目で気に入ってしまった。部屋は狭かったけれど、値段と立地を考えたら仕方ない。それに室内は清潔で、シャワー室も新しかった。設備は簡素で、ポットもミニバーもないけれど、どうせホテルでは寝るだけなのでこれで充分。

そんな訳ですっかりホテル・ペンジオンが気に入った私は、今回のベルリン一泊旅行でも、そんな宿に泊まろうと思った。ネットのホテル予約サイトで探してみると、前回泊まった「WAIZENEGGER」は、私が泊まりたい日は満室。でも「WAIZENEGGER」からそんなに遠くない、クーダム通りから一本入った通りに、雰囲気の良さげなホテル・ペンジオンを見つけた。「Hotel Pension Columbus」。5階建ての白亜の洋館で、その堂々とした外観は「WAIZENEGGER」によく似てる。いや、もっと格調高いように見える。値段も1泊60ユーロとちょっと高めだが、そのぶん部屋は広そうだし、なにより立地がとても便利。よし、ここに決めた!

5年ぶりにベルリンの地に降り立ったのは、10月21日の午後2時すぎ。本来なら午前11時に着くはずだったのに、飛行機に乗り遅れるという大チョンボをやらかしたせいで、到着が遅れてしまった。(事の詳しい顛末は「ベルリン名物・巨大ピザ」を参照)

空港から、快速バスに乗ってツォー駅へ。ホテルの最寄り駅は、地下鉄のウーラント・シュトラーセ駅だが、ツォー駅からも歩ける距離だ。なのでスーツケースを引きずって、人でごったがえしているツォー駅周辺を通り抜け、ブランドショップやデパートが並ぶクーダム通りへ。用意した地図に従い、脇道に入ると、さっきまでの喧噪が嘘のように静かになった。瀟洒な白い邸宅が建ち並ぶその一角に、「Hotel Pension Columbus」があった。


古い洋館ホテルの注意点その1。「エレベーターがない」

重厚な扉を開けて中に入ると、そこはまるで貴族の館のよう。しかしエレベーターがない。ホテルのある4階まで、この重いスーツケースをかかえて階段を上れと? などと怒ってはいけない。そうした近代設備を期待しないのが、古い洋館に泊まる客のたしなみというもの。スーツケースをかかえて、息を切らしながら階段を上がる。普通のホテルなら、こういうのはスタッフが運んでくれるのに! などと不満を言ってはいけないのだ。(でも疲れた……)

DSC_0588.jpg

古い洋館ホテルの注意点その2。「カギが開けにくい」

ようやく4階にたどり着き、ブザーを鳴らすと、出てきたのは50代くらいの上品な男性。さっそくカギを三つ渡され、一つはホテルのカギ、一つは部屋のカギ……と説明された後、「カギの開け方」を教えてもらった。ドイツの家のドアは、単に一周回しただけでは開かないものが多く、旅行者には少々ハードルが高いのだ。ドイツでも新しいホテルだと、カード式のオートロックタイプなので、カギもすんなり開くのだが。

案内してもらった部屋は、予想以上の広さだった。スーツケースを置いてベッドに座ると、そのままごろんと横になりたくなった。しかし今、横になると二度と部屋から出たくなくなりそうなので我慢する。それくらい居心地がいい。「ホテルの部屋」というよりは、親しい友人宅の客室に招かれたような気分。アンティーク調の家具や調度品は、どれも、大切に使われてきたモノならではの「ツヤ」を感じさせる。
ホテルとして使われる前は、実際に人が住んでいたんだろうなあ。最初からホテルとして作られた部屋だと、こんなぬくもりは感じられない。
もっとゆっくりしていたかったが、空腹には勝てず。念願の巨大ピザを食べに行くため、いそいそと部屋を後にした。
DSC_0648.jpg
部屋の窓から見える、中庭の緑がまぶしい。


DSC_0634.jpg
タンスの中の棚には、ギデオンの聖書があった。
※ギデオンの聖書……国際ギデオン協会が、ホテル、病院、刑務所等に配布している聖書のこと。

このホテルを選んだ第一の理由は「立地の良さ」。ベルリンを代表するショッピング街・クーダム通りから一本入った通りにあって、買い物に便利だし、夜遅くなっても人通りがあるから安心だ。スーパーマーケット「カイザース」が、ホテルの近くにあることもチェックずみ。
さて念願の巨大ピザを食べ、ポツダム広場を観光した後、くたくたになった足で地下鉄に乗ってホテルに向かう。ウーラント・シュトラーセ駅で降り、駅からほど近いカイザースに行ってサラダとヨーグルト、お土産のお菓子などを購入。
ホテルの近くにはコーヒー&チョコレート専門店もあった。カフェも併設されているので、時間があればここでケーキを食べたいと思っていた。が、飛行機に乗り遅れたおかげでそんな時間もなし。店に入ったときには、すでにカフェは閉まっていた。
幸い店はまだ営業中だったので、コーヒーとチョコレートを買い、ホテルに帰った。

ホテルまでの階段を上がり、ドアのカギを開けようとしたが、すんなりと開いてくれない。さすがドイツのカギ、なかなか手強い。でも負けない! などと勇者気分でカギを回していたら、中からスタッフがドアを開けてくれた。そしてもう一回、カギの開け方をレクチャーしてくれる。覚えの悪い客ですみません……。

古い洋館ホテルの注意点その3。「バスタイムがスリル満点」

さて、晩ご飯も食べたし、後はシャワーを浴びて寝るだけ。この部屋はトイレは共同だけど、シャワーは室内に設置されている。これまでの経験から、「少々値段が張ろうが、シャワー付きの部屋にすべし」と考えていた。というのも、古い建物を使った雰囲気のあるホテルで、もっとも警戒すべきなのはシャワーだと思うからだ。
建物が古くなると、どうしても水回りが傷んでくる。排水がスムーズにいかなくて、水がなかなか排水溝から流れてくれなかったりするのだ。
以前、泊まったロンドンのホテルはシャワーが共同だったが、前に利用したお客の髪が、流されきれずにシャワーブースの床に残っていた。でも自室にシャワーがあれば、そういうことはないから安心だ。

古いホテルのシャワーは、蛇口も真鍮製で、アンティークな趣がある。だが見て楽しむのと、実際に使用するのとでは違う。その蛇口をひねっても、ジャーッと勢いよくお湯が出てくれないことも多い。チョロチョロ、チョロチョロとしか出ないので、寒い時期だと体が凍えてくる。もちろんバスタブなどというものはない。
お湯をひねったはずなのに、初めは冷水しか出てこないこともある。そんなときは裸で震えながら、水がお湯になるのを待ち続けるはめに。でもシャワー付きの部屋なら、ちゃんとお湯が出るまでバスタオルにくるまって、暖かい部屋で待機しておける。そういう意味でも、シャワー付きの部屋はいい。
が、冷水がお湯になったからといって、安心するのはまだ早い。そのお湯がいきなり熱湯になったりするから気を抜けない。「あちっ!」と思って蛇口をひねると、今度は冷水がふき出してきて、なかなかお湯に戻ってくれない。「ちゃんと温度調節しているのに、お湯の温度が一定しない」というのも、古いホテルのシャワーの難点。一日の疲れを癒すはずのバスタイムが、一日でもっとも緊張する時間になったりする。

そんな訳で、このホテルでも用心しながら蛇口をひねった。……よかった、ちゃんとお湯が出た。その出方も、チョロチョロ、じゃなくて普通に出てくる。でもやっぱり、お湯の温度が一定しない。蛇口をひねって湯温を調節しながら、シャワーを浴びる。そしてお湯を止めようとすると…………あれ、蛇口がひねれない。さっきまでちゃんと動いてたのに、今は固くて、びくともしない。もしかして、極限までひねりすぎた?
幸い、排水システムは正常なので、シャワーから出てくるお湯はどんどん排水溝から流れていってくれる。それでもガラス板で囲まれたシャワーブース内は湯気が充満し、その湯気がガラスの隙間から部屋にも漏れ出てきた。私はそれを見ながら、フロントに電話をかけていた。が、つながらない。どうやらホテルに常駐している訳ではなく、夜は自分の家に帰ってしまうらしい。

古い洋館ホテルの注意点その4。「フロントが24時間対応ではない」

こうなったら、他の宿泊客に助けを求めるしかない。私は部屋を出て、廊下で耳を澄ました。斜め向かいの部屋からテレビの音声が聞こえてきたので、ドアをノックして「Excuse me,please help me」と呼びかけてみる。するとテレビの音が止まり、しばらくしてドアが開いた。顔を見せたのは、大柄な若い白人女性。私が事情を説明すると、彼女はすぐに部屋までついてきてくれた。そして部屋を見たとたん、状況を理解したらしい。流れ続けるシャワーと、漏れだす湯気ですっかり暖かくなった部屋。彼女はシャワーを止めようと蛇口をひねったが、やはり固くて動かない。
二人で部屋を出て、廊下の向こうの管理人室のドアをノックする。が、返事はなし。受付の机にあるホテルの名刺を手に取り、そこに載っている電話番号にもかけてみた。が、呼び出し音が鳴り続けるばかり。

DSC_0951.JPG


ホテルの名刺

状況はいっこうに改善しないものの、「助けようとしてくれている」人が隣にいるというだけで、私はとても心強かった。大丈夫、きっとなんとかなる。
彼女は「自分の部屋から電話してみる」と言って、いったん自室に戻った。私は「もう一度」と思い、管理人室のドアをさっきより強くノックする。が、反応はなし。やっぱり力づくでシャワーを止めるしか……と思って廊下を引き返すと、さっきの彼女が部屋の前で私を手招きしていた。部屋に入ると、シャワーはぴたりと止まっていた。シャワーブースには、大柄な若い白人男性。彼が蛇口をひねって、お湯を止めてくれたのだ。
彼はジェスチャーで、「蛇口が固まっていたんだ」と説明した。やっぱり蛇口が古いからかなあ……と、原因を蛇口に責任転嫁する私。蛇口が古いからこそ、もっと慎重にひねらなければいけなかったのに。
二人は、別々の部屋に泊まっていたカップルらしい。笑顔で「Good night」と部屋に戻っていく二人に、私は何度も礼を言った。旅行一日目の夜に続いて、このベルリンでも、他の宿泊客に助けてもらった。女一人の旅行なので、何かあった時に困ることも多いけれど、逆に女一人だからこそ、周囲の人も助けてくれるのかもしれない。

天井の高い朝食ルーム

ホテル・ペンジオンにレストランはない。が、朝食ルームはある。翌朝、8時すぎにその部屋に行くと、昨夜助けてくれた彼女がすでに席について食事をしていた。
一般的に、ドイツのホテルの朝食は豪華だ。でもメニューはだいたい決まっているので、何日も旅行していると「ま、こんなもんか」と醒めてくる。何種類かのパンにチーズ、ハム、半熟卵。デザートはヨーグルト。このホテルでも基本はそのメニューだったが、旅行中でもっともおいしく、印象に残る朝食だった。大きな窓から朝陽が降り注ぐ、天井の高いクラシカルな朝食ルームというロケーションも、朝食を印象深いものにしたのだろう。そしてパン。他のホテルでは薄く切られたライ麦パンが数種類と、クロワッサンというのが多かった。が、このホテルでは俵形の白いパンがメイン。軽く表面を焼いているので、外パリッ、中はふわっふわ。おいしくって、二個も食べてしまった。
サイドテーブルにはシリアルがあり、各自、カップに盛って牛乳をかけていただく。このシリアルの種類も多く、5種類以上あった。日本では食べられないような珍しいものも多く、いろんな種類を少しずつカップに入れておいしく食べた。さらにおかわりまでした。(朝からどんだけ食べるねん…)
111022_0815~01.jpg
ホテルの朝食が豪華だと、一日のエネルギーをたくわえられる上に、昼食を軽めにしても大丈夫なので財布にも優しい。朝食でお腹も心も満腹になるので、昼になってもそんなにお腹が空かないのだ。なので昼食はインビスなどでササッとすませて、そのぶんたっぷり観光できる。
このホテルの朝食は豪華な上に、パンを焼いてから皿に乗せて持ってきてくれたりと、細やかな心遣いがうれしかった。次にベルリンに来たときも、このホテルに泊まりたい。(そして蛇口はひねりすぎないようにしたい)
web拍手 by FC2
スポンサーサイト
web拍手 by FC2
月末にこのホテルへ泊まりに行くので非常に助かりました。想像通り良さそうなところですね。
ひとり旅おとこ | 2012/06/10 15:03
お役に立てて嬉しいです。繁華街にあるとは思えないほど静かな居心地のいいホテルで、いったんチェックインしたらもう部屋から出たくなくなるほどです(笑)。設備のレトロさも含めて、楽しんできてくださいね。
めえこ | 2012/06/10 19:44
COMMENT









Trackback URL
http://still-crazy.jugem.jp/trackback/52
TRACKBACK