何年たっても、まだ狂ってる。
Still Crazy After All These Years (Paul Simon)
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真夜中の不審な訪問者
海外を旅行していると、思わぬハプニングが多い。「この体験はあとで記事にしよう」と思うこともしばしばだ。
だがいざ帰国すると、とたんに執筆意欲が萎えてしまう。だって、いくら記事の中で「さあ大変だ、これからどうなる?」と書いたところで、それを書いてる時点で「無事に日本に帰ってきた」っていうのが分かってるわけで。読者をハラハラさせられない以前に、書いてる自分がハラハラしない。

帰国して、旅行中のハイテンションが醒めてしまうと、「よく考えれば、別にたいした体験じゃなかったよね」と妙に客観的になってしまうことも多い。なので記事にも書けないのだが、それでいいのだと思う。別に、ブログのネタを作るために旅行に行ってるわけじゃなし。旅行中は安全第一。何事もなく帰ってくるのが一番だ。
ただ、自分は安全第一で旅行していても、自分ではどうしようもない状況に巻き込まれ、恐い思いをすることはある。そして今回は自分だけでなく、見知らぬ相手にも恐い思いをさせてしまったかもしれない。そんなお話。

旅のはじまりは10月18日、関西国際空港から。二度目のドイツ旅行の目的は、スタジアムで試合を見ること。5年前は結局、スタジアムで観戦できなかったから。まああれは、事前にチケットを持たずに現地に飛んだ自分が悪い。W杯のチケットが簡単に現地で調達できたら苦労しない。

あの苦い経験を繰り返さぬよう、今回は事前に試合チケットを購入した。もちろん行き帰りの飛行機とホテルの予約もすませた。これで準備は万全。いざドイツへ!
ちなみに今回、選んだ航空会社はKLMオランダ航空。「選んだ」とか偉そうに言ってますが、ようは一番安かっただけっす(笑)。それに乗り継ぎをするスキポール空港の評判がいいので、一度利用したいというのもあった。
予定では、朝10時半に関空を飛び立ち、約13時間のフライトの後、アムステルダムのスキポール空港に15時半到着。一時間ほど空港で過ごした後、ケルン・ボン空港へ。到着は17時55分。まだぎりぎり空は明るい時間だ。そこから電車に乗ってケルン中央駅に着くのが、たぶん18時半。タイミングが良ければ、夕焼けに染まる大聖堂に会えるかもしれない。5年ぶりに見る大聖堂は、茜色の空をバックに、さぞかし荘厳なことだろう。
駅からホテルまでは徒歩10分ほど。もちろんホテルまでの地図はプリントしたけれど、初めて行く道だし、暗くならないうちにホテルに着きたい。だから18時半ごろ駅に着くというのは、本格的に暗くなる直前の、ぎりぎりのタイミングだった。

だが計画通りには行かないのが旅行である。出発当日、関西国際空港に着いた私を待っていたのは、「KLMは3時間ほど遅れます」という電光掲示板の表示だった。アムスに向かう飛行機が、まだ関空に着いていないという。あちゃー。
KLMのカウンターで再度手続きをしたところ、飛行機が遅れたことでスキポール空港での乗り継ぎ時間も大幅に増え、ケルン・ボン空港へ着くのは深夜11時半。これはまずい。せっかく用意したホテルまでの地図が無駄になる。いやそんなことはどうでもいい。ケチケチせずにタクシーを使えばいい。問題なのは、そんな時間にホテルに着いても、中に入れないだろうということだ。
これが近代的なホテルなら、フロントも24時間対応だから、何時に着いても大丈夫なんだろうけれど。私が泊まるホテルは家族経営の小ホテルだから、管理人は夜になると自宅に帰ってしまう可能性が高い。ネットで予約したときも、送られてきた予約完了メールに「チェックインは夜8時まで」と書かれていたし。
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旅行初日に宿泊予定のホテル「イム・クプファーケッセル」
http://www.im-kupferkessel.de/en/hotel_cologne.html


そんなわけでのっけからハプニングに見舞われたドイツ旅行だったが、予定通り3時間後にはアムス行きのKLMに乗り、関空を飛び立った。いや出発が3時間遅れた時点で、すでに予定通りではないのだけれど。でももしかしたらもっと遅れて、最悪、出発が明日になることもありえたわけだし。それを考えると3時間遅れですんで良かった。(こういうのを無理やりポジティブ思考といいます)
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スキポール空港着陸直前、窓の下にはのどかな田園風景が広がっていた。やっぱオランダって農業国なんだなあ。

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スキポール空港は評判通り、近代的で美しい空港だった。ショップも豊富にあり、おかげで3時間ほどの待ち時間を退屈せず過ごすことができた。窓越しに陽がとっぷりと暮れていくのを見たときは、焦りとやるせなさが襲ってきたけど。どうあがいてもホテルのチェックインには間に合わない。遅れることを伝えようと、ホテルに電話を入れる。片言の英語だがなんとか通じた。案の定、管理人さんは夜には家に帰るらしい。だが郵便ボックスに、ホテルのカギと部屋のカギを入れておいてくれるらしい。
それはありがたいけれど、でもドイツのカギって開けにくいんだよなあ。外に街灯とかもないだろうし、真っ暗闇の中で、ドアのカギをちゃんと開けられるだろうか。
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オランダといえばお花。というわけで、空港内のあちこちに花屋さんがあった。面白いのは花よりも、球根の方が目立っていたこと。キャベツのように大きい球根がゴロゴロと並べられているので、一見、花屋というより八百屋に見える。外国人観光客がオランダに何を求めているか、よく分かっているというべきか。

ようやくケルン・ボン空港へ着いたのは夜11時半。ここからSバーンに乗ってケルン中央駅へ。
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ケルン・ボン空港駅のホーム。こんな時間だから人も少ない。深夜の駅のホームの、このなんともいえず寂しい雰囲気が妙に落ち着く。

ケルン中央駅を出ると、当たり前だがすでに真っ暗。茜色に染まる大聖堂を見れるかも、という望みはかなわなかった。それでもひと目見ておこうと、タクシー乗り場に向かう途中で振り返ったとたん、数秒ほど動けなくなった。暗闇にライトアップされて浮かび上がる大聖堂の、想像を遥かに超える迫力に圧倒されたのだ。5年前にもさんざん見ていたはずなのに。何度見てもすごい。こんな巨大で古い建造物が、駅の真ん前にそびえているというのもすごい。
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幸い、タクシーは何台も停まっていた。さすが大都市。タクシーに乗ってホテルへ向かう。外は真っ暗なので、今、どのへんを走っているか全く分からない。車中で運転手のお兄さんと「チャイニーズ?」「ナイン、ヤーパン」などの会話を交わした後、ホテル前に到着。料金をチップ込みで渡した後、「おつりはいらないよ」というドイツ語がなんとか通じた風なのがうれしい。チップをスマートに渡せると、ちょっとだけ旅行レベルが上がった気になる。

タクシーが走り去ると、とたんに静かになった。あたりは閑静な住宅街で、こんな時間だから人っ子ひとりいない。しかしこうした「見知らぬ異国でひとり」という心細さを味わうのも、旅の醍醐味のひとつ……とか自分に言い聞かせているのは、怖かったからだ。いくら治安の良いドイツとはいえ、真夜中にぽつんと外にいるのはやっぱり怖い。幸い、郵便ボックスはすぐ見つかった。下の引き出しに手をつっこむとカギが手に触れた。どうやらこのカギは、郵便ボックスのカギらしい。この郵便ボックスは、大切な郵便物を盗まれないよう、上の部分にカギがかかっているのだ。
暗闇の中、背伸びしながら手探り状態でカギを開ける。中に手を突っ込むと、ぶあつい封筒が入っていた。これだ。封筒を開くと、カギが3つ入っていた。ほっ。
ホテルのドアのカギを開け、中に入る。これで一安心……とはまだいかない。「部屋のカギを開ける」というミッションがまだ残っている。前述したように、ドイツのカギは開けにくいのだ。
だがその前に、「自分の部屋を突き止める」というミッションが残っていた。というのも、封筒の裏に管理人からのメッセージが書かれていて、そこにルームナンバーも記されているんだけど、その文字が読めないのだ。なので自分の部屋が何号室なのか分からない。仕方なく、片っ端から部屋のドア穴にカギを差し込み、開くかどうか試してみた。こんな深夜に、いきなり外からドアをガチャガチャやられて、中にいる人はびっくりしただろうと思う。私も焦っていた。「早く部屋を見つけたい」と思ってカギを回すものの、どの部屋のドアも開かない。縦に長い建物なので、一つの階に部屋は二つほど。階段を上り下りするだけで疲れてきた。早く自分の部屋にたどりついて休みたい。でも自分の部屋どこー?(泣)
半ば自棄になってきたとき、突然ガチャリと音がして、近くの部屋から青年が出てきた。外からドアをガチャガチャやられて、不審に思って出てきたのだろう。申し訳ないと思いつつ、これはチャンスと、今の状況を説明する。封筒に書かれた管理人のメッセージを見せると、青年はあっさり「1番の部屋だよ」。
……これ、「1」って書いてあったんですかー? でも確かにそう言われれば「1」に見える。じゃあ一番はじめに開けようとした部屋が、私の部屋だったんだ。こんなに探し回らなくてよかったんだ……と脱力しながら、青年に礼を言って部屋に向かう。他の宿泊客に迷惑をかけたけれど、なんとか部屋にたどりついた……とはまだいかない。最後の難関「カギ」が立ちふさがったのだ。さっきも開かなかったドア。やっぱり今度も開きません。ドイツのカギの開け方を、旅行前にネットで調べて復讐しておけば良かったと後悔してももう遅い。
そしてここでもまた、さっきの青年が助けてくれた。ドアが開かずに困っているのを見かねたのか、背後から声をかけてくれ、私の代わりに、あっさりドアを開けてくれたのだ。なんてよくできた青年でしょう。ドイツ人ってお年寄りから若い人まで本当に親切。見習いたい。

こうして、ようやく部屋にたどりついた。その後のことは覚えていない。たぶんテレビも見ずに寝たのだと思う。やれやれ、旅行一日目からこんな苦労をするとは思わなかった。でもそのぶん、貴重な教訓を得た。飛行機が遅れるなどの不測の事態に備えて、旅行一日目のホテルは、24時間対応のホテルにしておけ。以上である。

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郵便ボックスに入っていた三つのカギと、管理人からのメッセージ

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ようやくたどりついた部屋は、モダンで明るい雰囲気だった。
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